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西口修治郎厩務員

描いているドラマは「完全復活」

-:今回はミッキーアイルや、同厩舎にもグランデッツァという先行馬もいますが、ある程度ブラックヒルが気持ちよく走れる下地は揃っていますか?

西:前を交わしに行くのではなく、自分のペースで走れれば、直線で前に並ぶことはできると思います。そこからどうなるか、ですね。

-:それでは、ドラマはすでに始まっているということですね。

西:「完全復活」というドラマを描いていますけどね。

-:そのために必要なのは、やはり気持ちよくレースで走らせることだと。

西:5歳にもなると、もう中年クラスですから、馬の性格もおっとりしてくるし、変わってくるんですよ。だから、余計なところに力を入れなくなるんです。一番キツくなるのは3歳から4歳にかけてですね。ところが5歳になって、ある程度年齢を重ねてくると、理屈もわかってくるし、どういうパターンかもすべて理解してきて、慌てなくなります。そうすると、走るときには、走る場所とゆっくりする場所が、競走馬なりにわかってくるので、落ち着きが出てくるんです。

-:そういう意味では、今回の追い切りはメンコを外した上で、それでも暴れること無く終わりましたね。

西:それでもまだ、余裕のある時計でしたよ。



-:ダービー卿の追い切り時は、メンコをしていましたよね。今回はレースでも外されるんですか?

西:それは先生の判断だと思いますけどね。

-:普段からこれだけ外しているのであれば、レースで外してくる可能性もありますよね。

西:それもひとつの考えだと思います。前もそうだったんですよ。あまりにものほほんとしているから。ただ、今回は年齢的なものだからね。

-:いい意味で、どっしりしてきたと。

西:厩舎で移動している時でも、前のように周りを見張るということもなくなりました。変わってきていますよね。

-:自分を確立してきた感じでしょうか?

西:納得していると言えばいいでしょうか。色々と学習してきて、暴れることもなくなりました。

思い出の府中マイルでリベンジ

-:昨年の大敗から、リベンジを期す一戦ですね。

西:そういうつもりは強く持っていますよ。

-:NHKマイルと同じ舞台で、安田記念で14着というのはショック過ぎる結果でした。

西:そうでしたね。体調面もあっただろうけど、精神面でね。自分でも分からないけど、気持ちが動かないと、体も動かなかったのでしょう。人間も一緒だと思います。今年の阪急杯のスタートで、二の脚からも動けているから、後はいい気分で走れる展開になれば、いい結果は出ると思います。

-:やや間隔が空いてG1ということで、少しひっかかる部分もあります。メンバーも強力です。

西:それでも、夢は持たないとね(笑)。

-:まだレースまで10日あります。

西:馬は一気には変わらないから、如何に気持ちよく、普段通りに送り出すか。ストレスを溜めないように、同じ気持ちで持って行ってあげたいね。そういうふうに、向上するように仕向けてあげるのも、仕事ですからね。



-:ブラックヒル自身も、ダービー卿を勝って、自分が久々に勝利したということをわかっているでしょうか。

西:そういう反応はね、いいものを感じていると思いますよ。そういう兆しも出てきています。

-:馬の世界は、一度リズムや歯車が狂うと、元に戻すのが大変ですね。

西:人間でもそうだと思います。オリンピックに行く選手でも、調整が上手くいかないことはあります。ましてや会話ができない馬と人間が、それをいかに調整していくか。やっぱり、大事なのは気持ちだと思います。


「伊達に5連勝はしてないと思います。気分良く行くと、1800mでも勝ち切れたのですから、あれが能力の証明だと思います」


-:気分良く行き過ぎると止まってしまうから、タメを作らなければいけないという言説が日本の競馬にはありますが、ブラックヒルの場合は、本当に気分良く行ってしまったほうがいいんですね。

西:そう。伊達に5連勝はしてないと思います。気分良く行くと、1800mでも勝ち切れたのですから、あれが能力の証明だと思います。

-:いいイメージを持ちつつ本番を迎えたいですね。

西:悪いところを探すより、いいところを参考にして、そのつもりで接してやっています。

-:10日後の本番を楽しみに、府中でお会いしたいと思います。

西:お互いに、美味しい祝杯をあげたいものですね。

-:勝ってからのお楽しみとしましょう。ありがとうございました。

●カレンブラックヒルの西口修治郎厩務員インタビュー(前半)はコチラ⇒

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●阪急杯前
カレンブラックヒルについてのインタビューはコチラ⇒



【西口 修治郎】Shujirou Nishiguchi

大阪府堺市出身。叔父が小川佐助厩舎に所属しており、自然とこの世界に入る。キャリアのスタートは清水久雄厩舎。一筋で28年勤務し、厩舎解散後に平田修厩舎へと異動。
ベッラレイアなども担当していた腕利きだが、思い入れの馬はミスベロニカ。「レイアと同時期に入って2頭とも担当。負けじと凄いバネの持ち主だったけど、亡くなってしまった。生きていたら、いい成長を遂げてくれた気がしますね」。馬と接する上でのモットーは「何かを要求している場合が多いから、それをできるだけ理解してあげること。手入れの仕方でも、気持ちが大事」。馬とのコミュニケーションを大切にするベテラン厩務員。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。


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