関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

高阪陽祐調教助手

去勢で体質にも変化が

-:この馬のフットワークなどで特徴的なことはありますか?

高:正直、決して乗り味は良くないんですよ。別に柔らかいわけでもないし、トビが大きいわけでもないです。ただ、昔から緩いなりにも芯があるのか、調教は真っ直ぐ走りますね。ブレないです。それは良さだと思います。乗りやすさもあって、それは調教の乗りやすさですけどね。スタートを下ろしたら、そのまんま真っ直ぐゴール板まで走っていきます。そういう馬はなかなかいないですね。乗ったことないです。

-:芯はしっかりしているんですね。

高:筋肉の緩みはあるけど、骨格なのか何かはわからないですが、キレイに真っ直ぐシューッと走っていきます。

-:では、この馬を見る時は、坂路追い切りの時計とか、その辺はあんまり判断しないほうがいいタイプですか?

高:そうでしょうね。時計はもともと出ない馬でしたから。今でこそだいぶ出るようになりましたけど。



-:走り方というか、この馬自体が坂路は得意ではないから、オープン馬のなかでも坂路を走らせて、おぉ、さすがというタイプではないですね。

高:そうですね。調教を見たら駆けるタイプではないと。それでも52か51秒で終い12秒ぐらいで上がってきたら、十分仕上がっているという認識ですね。せん馬だったから毛ヅヤとか、冬毛が抜ける、抜けてないとか、はっきりしてきましたけどね。体調の良さで。

-:せん馬にするということは、ホルモンバランスを変えて、牡馬独特の筋肉の硬さを取ってあげるということが、狙いの一つだと思います。動き自体で古馬となってからの変化はありますか?

高:動き自体は、一歩の長さは伸びていますね。2、3年乗ってきていますが、全然乗り方は変わらないですからね。同じ姿勢で、感覚は変わっていませんが、成長してから出る時計は速くなってきていますね。以前は15秒を切ってきたら、頭が上がってきていましたが、今は14秒7、8ぐらいで下がったままなので、完歩が伸びているということでしょうし、同じように乗っても時計が速くなっていますからね。それだけ体が使えるようになってきているということでしょう。

春の総決算参戦も

-:では、ここで2つめのタイトルを獲りにいくということですね。その後は宝塚記念ですか?

高:獲りたいですね。条件次第で宝塚記念もあると思います。

-:天気に敏感であるということですね。

高:今までの結果を見てみるとそうですね。でも、「有馬記念は頑張ったやん!」て感じなんですけど、去年も函館ではサッパリでした。

-:そうでしたね。その後が金鯱賞で勝利と。

高:大阪杯にしても金鯱賞にしても、ボロ負けした後でも引きずらないんですよね。それが長所だと思います。気が勝っているからでしょうけど、前のレースで走りたくても進んで行かなかった、という記憶が残っていないんでしょう。またキッチリ作ってやれば、元通りちゃんと走ってくれますからね。

-:いい意味で、頭が良過ぎるのではないのでしょうか?

高:本当の意味で頭が良くないですね。ズルさはなく、真面目なんですよね。

-:普段を見ていると、やりたいことを次から次へと、勝手にやっているみたいな感じですよね。

高:やって怪我をすることがわかって、怪我をしない程度にやるところは頭が良いと思いますが、競馬を見ていたら本当に頭が良いわけではないと思います(笑)。頭が良い馬は、嫌なことがあったら、こんなに走らないと思います。



-:競走馬にとって、走るという辛いことを連続してこなせるということは、性格面がプラスに働いていると。

高:そうですね。2歳時に来た時は、うるさかったんですね。でも、いざ坂路に向かっていった時、スタート地点を下って行くところあたりで、綺麗にスイッチが替わるんですよね。その時、一切悪いことはしませんね。乗り終わって、運動し始めたらやんちゃするんですよね。そういう切り替えや、自分のやるべきことがちゃんとわかっている感じはありますね。競馬に行っても「大丈夫かな」と思っても、ちゃんと競馬してきますからね。

-:今回の鳴尾記念や、先にある秋の天皇賞に向けて力が入りますね。

高:上でやるには、もう一段階パワーアップしないといけませんね。今年の王道路線は強いですから。

-:ハーツクライ産駒の成長力に期待しましょう。

高:もう一回覚醒してくれるといいんですが……。何かスイッチを探さなければいけないかもしれませんね。

-:せん馬は一度リズムが狂うと戻らないことがありますが、カレンミロティックの場合は極端に悪い時があっても巻き返してきますよね。安定感はないけど、すぐに盛り返してくる部分は能力の高さではないでしょうか。

高:そうですね。自分の型で勝負していくしかありませんからね。鳴尾記念は負けられないメンバーです。

-:体重はどれくらいですか?

高:昨日(5/29)量った時に460キロでした。レースでは450キロ台になるでしょうね。1年前の垂水Sは440キロ台(444キロ)で勝利して、ハマった感じはあったんです。あの勝ちっぷり(コースレコードで5馬身差V)でしたし、案外キッチリ絞ったほうがいい気がしていたんですが、その後は反動でガクッと調子が落ちましたからね。


「本当に天気だけです。負けられないぐらいの気持ちで、結果が出せるように仕事をするだけです。応援して下さい」


-:大阪杯の456キロは、まだ余裕がありましたか?

高:そうですね。450キロくらいでちょうど良いと思います。440キロ台になると後が辛くなりますから。

-:それでは、宝塚記念や秋の大舞台に向けて……。

高:ここは何とか期待に応えられるように、頑張ります。

-:晴れたらいいですね。

高:本当に天気だけです(苦笑)。

-:最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。

高:負けられないぐらいの気持ちで、結果が出せるように仕事をするだけです。応援して下さい。

-:ありがとうございました。

●カレンミロティックの高阪陽祐調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒

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【高阪 陽祐】Yosuke Takasaka

幼少の頃から競馬に親しむ。大学卒業後に軽種馬育成調教センター(BTC)の育成調教技術者研修へと進み、修了後は栄進牧場、ノースヒルズ、馬の温泉などを転々。年齢制限ギリギリで厩務員課程に合格した。
最初に所属したのは湯浅三郎厩舎で、ワンダースピード(後に転厩)などを担当。湯浅厩舎解散後に平田厩舎へと移った。「自分の馬乗りが達者だとは思っていないから、馬の能力をスポイルしないように。マイナスを極力減らすことを考えている」と、謙虚な姿勢で馬と接することがモットー。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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