オーナーとの思い出深いヤマタケサリー

-:多くの馬を管理されてきましたが、思い出の馬を教えて頂けないでしょうか?

畠:管理するようになってからは、ツキもあったのかもしれませんが、ハセシノブですかね。亡くなられた先生のところにいた馬が厩務員の方と一緒にウチの厩舎に来て、その馬で重賞を勝たせてもらいました。

-:80年に開業してすぐでしたね。翌年の新潟記念で勝って、最終的には3つのタイトルを獲りました。

畠:ウチにG1馬はいませんが、色々な馬が居ましたよ。例えばヤマタケサリーは、オーナーの方と一緒に馬を見に行ったときに買ってもらったのですが、そのときに僕は別の牝馬を薦めたんです。もし走らなかったとしても繁殖として通用するだろう、という考えがあって別の馬を薦めたのですが、オーナーが「先生から薦めてもらった馬も買うけど、こっちの馬も好きだからもらうわ」と買ったのがヤマタケサリーだったんですよ。そういう馬が重賞を勝ってくれたので、ツキがあったという意味では思い入れの強い馬ですね。

-:今のお話の中にもありましたが、馬を購入する際に、すでに先々のことを考えているのですね。

畠:そうですよ。その時は初めて馬を買う方でしたから、損があるようなことをしてはいけないですからね。もちろん競走馬なので、やってみないと分からないところはあります。しかし、血統などを見て、走らなくても繁殖としてなら返してくれる部分があるなと思ったので薦めました。


「目にはその馬の勝負根性だったり、正直な部分が見えると思うんです。競走馬は、つまりスポーツ選手なんですよ。やっぱり根性が据わっていないとね」


-:セリのときなど、先生はどういう点をチェックされますか?

畠:目を見ることが多いですね。目にはその馬の勝負根性だったり、正直な部分が見えると思うんです。競走馬は、つまりスポーツ選手なんですよ。やっぱり根性が据わっていないとね。それこそハセシノブなんかは良い根性していましたよ。

-:馬の仕草で好きなところはありますか?

畠:馬は切ない時は寝ないんですよ。その辺りは寝たら襲われるという野生の部分かもしれません。具合が悪くても寝ないですしね。反対に体調が良くて、心身ともに満たされている時はいびきをかいたりすることもあります。あとは世話をしている人間が来たら、自分にエサをくれるということを分かっているんですよ。それで大きい声で鳴いたりする馬もたくさんいます。どこが可愛いと言われたら、その辺りが可愛いですよね。

-:調教師生活もあと少しで終わってしまいます。振り返ってみていかがですか?

畠:精一杯やって来られたのかなと思います。本当の始まりだった、実家を助けたいというところでは、助けになったかは分かりませんが、オーナーと一緒に実家に行って馬を買ってもらって、その馬で勝てたというのは幾分かは助けになったのかなと。

-:競馬界にいる後輩たちに向けてメッセージはありますか?

畠:馬という生き物に携わっている人間というのは何人もいるわけです。この社会で生きていくには馬そのものに対しての気持ちであったり、その馬に携わっている人に対しての気持ちを持ってないといけないと思います。馬に対してカッとなることもあるかもしれませんが、そういうことを思い出してくれたらと思います。言いたいことはそれだけですね。

-:今、欲しい物はありますか?

畠:もうこの歳なのでね、特にはないですよ。忙しい毎日を送ってきたのでね、ゆっくりできればと思っていますよ。

-:色々なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

(取材・写真=競馬ラボ 写真=武田明彦、競馬ラボ特派員)

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畠山重則調教師