春2冠制覇へサートゥルナーリアが始動。母は日米オークス馬、兄はエピファネイア、リオンディーズら説明不要の超良血馬はここまで無傷の3連勝でホープフルSを制し、G1馬の称号を手に入れた。前走後は、クリストフ・ルメール騎手との新コンビで皐月賞から始動が早くから表明されたが、兄たちが勝利できなかった第一冠目をクリアすることができるのか。1週前追い切りを終えた陣営を直撃した。

ルメール騎手と初コンタクト 状態は「ホープフルS以上」

-:いよいよ牡馬クラシック初戦の皐月賞(G1)ですね。ここまで3戦無敗のサートゥルナーリア(牡3、栗東・角居厩舎)ですが、前走のホープフルSでは体重が12キロ増えていたじゃないですか。それで、今週の体を見せていただくと、また一段と逞しくなったんじゃないかなと思ったんですけど、体重的には今、どんな感じでしょうか。

辻野泰之調教助手:今週の1週前時点で500キロなので、ホープフルSとちょうど同じくらいの体重ですし、おそらく競馬の頃には輸送もあるので、目方的にはもう少し減ってくるかなと思いますけどね。ホープフルSの時は、少し馬に緩さを感じた状態だったので、そういう面でのプラス体重もあったと思うんですけど、今回の方が体は締まって見えますし、やっぱりクラシックということで、みんなキッチリつくってくると思うので、こっちもそれに負けないような状態には出来てきていると思いますね。

サートゥルナーリア

▲馬房でリラックスするサートゥルナーリアと辻野助手

-:ホープフルSの時は、1週前はコースで当週は坂路で単走だった訳ですけど、今週(1週前)、先週(2週前)と2週続けてコースで併せて追われていますので、そういう面でも、ホープフルSよりは若干強めの仕上げになっているということですね。

辻:そうですね。負荷はあの頃よりは掛かっていると思いますね。ホープフルSの時は初めての輸送競馬ということもありましたし、年末の開催で変則日程でもありましたので、最終追い切りは単走で坂路という形になっていましたけど、おそらく今回は最終追い切りもCWで、併せ馬という形になると思いますけどね。

-:来週も、もしかしたら併せるかもしれないということですね。

辻:そうですね。予定ではCWコースで併せ馬をする予定です。

-:暮れと比べて、どれくらいの成長を感じますか。

辻:もともと追い切りはやればやるだけ動いてしまう馬なので、あまりやり過ぎず、とはいえ、G1なので手を緩めることなく行ければ、と思っていたんですけど、今のところは上手く調整出来ているかなと思いますね。

-:今週の1週前の動きというのは、時計的にはいかがでしたか。

辻:(道中は)併せた馬よりも外を回して、時計的にも内容的にもけっこう負荷は掛かったと思うので、1週前としては良い調教が出来たかなと思っています。昨日(4月3日)、(クリストフ・)ルメールさんも初めて跨ったので、どういう馬かということを確認してもらいました。

-:昨日が初めての騎乗ということですが、どんな言葉はありましたか?

辻:向正面で他の馬に絡まれても落ち着いて走れていたみたいですし「イージーコントロールで、パワーも感じる」ということを言っていたので、良い感触で帰ってきてくれたかなと思いますね。

サートゥルナーリア

▲1週前追い切りに騎乗するC.ルメール騎手と担当の滝川清史助手

サートゥルナーリア
サートゥルナーリア
サートゥルナーリア
サートゥルナーリア
冷静さが兄たちとの違いでありセールスポイント

-:これまでのレースで、弱点らしい弱点というのがあまり見当たらないのですが。

辻:この血統なので、やっぱりちょっと暴走気味にならないかというところが心配でした。去年は3戦したのですけど、今のところはそういうところも見せずに、我慢させたいところでは我慢してくれています。現時点はこれといった注文が付かない内容で勝ってくれているので、今のこのままのフィジカルとメンタルを維持してくれれば、良いパフォーマンスを出せるんじゃないかと思っています。

-:これまで3戦してこられて、一番ピンチだったのはどこでしょうか。

辻:やっぱり一番手探りだったのは新馬の前かなと思いますね。2走目、3走目は、ある程度、こちらもこういう馬だというのが掴めてきていた部分もあるので、やっぱり新馬戦というのが一番、こちらも色々試しながら、手探りの状態だったかなと思いますけどね。不安かと言ったら、不安という訳ではないですけど、お兄さんたちがああいう気性だったので、そうならないように、慎重にはなっていたかなと思いますけどね。

-:そういう表れが、マイル、1800、2000というステップアップを踏んでいっているというところに繋がっているのですか。

辻:そうですね。一気に距離を変えるよりは、その辺りは少しずつ馬に教えながら、距離が長くなっても、こういうところで我慢するんだよ、というところを覚えていってくれれば、とは思っていたので、どのレースも本当に良い経験になったと思いますね。

「行こうとしたところでこっちが控えていけば、控えてくれるくらい、本当に冷静に人の指示を待ってくれるような馬なので、その辺がお兄ちゃんたちとの違いかなとは思いますけどね」


-:この馬はスタートが良いですね。

辻:やっぱり普段からそうですけど、馬が冷静なので、変にゲート内でチャカチャカすることもないので、冷静にスタートを切ってくれますし、そういう不安はないですね。

-:新馬戦もハナに行くのかという勢いでしたからね。

辻:ええ。そこは今後のことも考えて、(デムーロ)ジョッキーも我慢させてくれたかなと思いますし、その辺りは萩SやホープフルSにも繋がっていったかなと感じていますけどね。

-:ホープフルSも1コーナー途中まではハナでしたね。

辻:それで、他の馬が行ってくれたので、ポジション的に下がるという形でしたけど、やっぱりあの位置で競馬が出来れば、競馬も安定してくると思います。4コーナーから直線でちょっと行き場がない時はヒヤッとしましたけど、その狭い間をこじ開ける瞬発力と怯まないメンタルの強さを改めて感じることが出来たので、あのレースで、また一つ課題をクリアしてくれたかなと思いましたけどね。

-:新馬、萩Sと頭数が少なかったので、ホープフルSが今まで経験した中で一番の多頭数だったけど、そこも内枠から捌いてこられたというところですね。

辻:そうですね。

サートゥルナーリア

-:皐月賞ともなると、ホープフルS以上にお客さんも入ってくると思うので、先ほど言われていた激しさへの懸念という意味では、ファンもこの兄弟にはそういうイメージがあると思うのですけど、音への反応はどうですか。

辻:意外に、良い意味で鈍感と言いますか、そんなに気にしないタイプですね。なので、周りに影響されるよりは、おそらく自分との戦いになると思うんですけど、今のところは馬がすごく冷静でいてくれているので、それが続いてくれれば良いかなと思っていますけどね。

-:ホープフルSのパトロールを観たんですけど、別にコスモカレンドゥラの後ろには入れていないですよね。

辻:ちょっとズレていましたかね。

-:引っ掛かろうと思えば、行ける態勢だったけど、我慢出来ていたということは、コントロールが利いていたということですね。

辻:普段もそうですけど、行こうとしたところでこっちが控えていけば、控えてくれるくらい、本当に冷静に人の指示を待ってくれるような馬なので、その辺がお兄ちゃんたちとの違いかなとは思いますけどね。

腕きき助手の悲願「ダービー制覇」へ向けて 1冠目へ

-:あれだけJCで強かったエピファネイアですら、中山2000では負けてしまいましたからね。

辻:お兄ちゃんは2頭(リオンディーズ)ともですけど、順調に良い状態で使えたという訳ではなかったので、その辺りはこの馬に借りを返して欲しいなという気持ちは強いですけどね。

-:しかも、エピファネイアの場合は、最初は先行させるような仕上げ方で、それが途中から溜めるようになりましたかね。

辻:新馬を使う前から前進気勢の強い馬だったので、危ういところがあるなと思っていたんですけど、やっぱりレースを使う毎にそういうところを覚えてきてしまって、弥生賞ではけっこうガッチリ噛んでしまっていましたし、ちょっとチグハグなトライアルと本番のレースになってしまったかなと感じましたね。

「お兄ちゃんたちと一緒で、すごくパワーがあるので、下が渋って他が苦にするのだったら、その分、有利になるんじゃないかなという気はしますけどね」


-:そう考えたら、ホープフルSは前半1分2秒5くらいで遅めだったじゃないですか。そこを2番手でしたけど、我慢出来たということは評価出来るところですよね。

辻:ペースが遅くても流れても、対応出来るというのはすごい強みになると思います。今度はフルゲートになりますので、やっぱりあれだけ結果を出してきている馬なので、多分マークもキツくなってくるでしょうからね。

-:マークといっても、これまでもマークされていますよね。

辻:そうですね。その辺りは1頭で走る訳じゃないので、絶対ではないと思うんですけど、多頭数の競馬というのは、今後に向けてもクリアして欲しい課題の一つですね。

-:これまでは馬場が良い中で競馬をしてきている訳ですけど、たまに雨が降ったりだとか、弥生賞でも雨が降りましたし、今の時期で馬場が悪くなった時にどうなのかなと思っているファンもいると思うのですが。

辻:その辺りはお兄ちゃんたちと一緒で、すごくパワーがあるので、下が渋って他が苦にするのだったら、その分、有利になるんじゃないかなという気はしますけどね。

サートゥルナーリア

-:まず1冠ですけど、相手どうこうじゃなくて、サートゥルナーリアの精神状態を含めて、状態をキープすることが勝利への一番の近道ということですね。

辻:この馬のパフォーマンスが出せるように、こちらで調整していければ、結果は付いてきてくれるかなとは思っていますけどね。

-:今回は、担当の厩務員も滝川さんに替わられて、これまでデルタブルースとかヴィクトワールピサを担当されてきている名手な訳ですけど、その滝川さんの評価はいかがですか。

辻:どちらかといえば、ジャッジは厳しい方なのですけど、おそらくかなりの器だということは感じてくれていると思います。というのも、あまりこの馬に関しては悪いことを言わないというのが、ある意味、あの人にとっての最大の誉め言葉かなという気はしますね。

昔からずっと「ダービーを獲りたい」と言ってきた人で、ドバイ(ドバイワールドC)とかオーストラリア(メルボルンC)、香港(香港マイル)、皐月賞も有馬記念も獲っているんですけど、それよりも「日本ダービーを獲りたい」ということはずっと言ってきているので、おそらく今回は、それを意識出来る馬に巡り会えているので、本人もかなり意識しているとは思うんですけどね。

-:普段の滝川さんを見ていると、飄々とした感じで、とてもそうとは思えないですけどね。

辻:そうですね。まだ皐月賞だからというのはあるかもしれないですけどね。それで、今回から担当ということで、どういう状態が一番この馬にとって良いのか、まだ少し滝川さん自身も手探りなのかなと思うんですけどね。

サートゥルナーリア

-:それにしても、楽しみな皐月賞になりましたね。

辻:本当に楽しみですね。クラシックの第一弾なので、前哨戦という位置づけはなかなかし辛いなという気はしますし、春はこの2戦ということは決まっていますので、一戦一戦キッチリ力を出し切れるようにつくっていかなきゃいけないなと思っています。

-:ダービーに向けて好スタートが切れるように応援していますが、それ以上にファンが期待していると思うので、メッセージをいただけますか。

辻:お兄ちゃんたちは春のクラシックで結果が出せなかったので、その分、この子に取り返して欲しいなという気持ちは厩舎一同、強く思っているところです。まずは皐月賞で結果が出せるように全力で頑張っていきたいと思います。

-:ありがとうございます。

辻:ありがとうございます。