世代初の重賞ウィナーに一番乗りへ。6月23日の芝1200m戦を好時計で制したレッドヴェイパー。それも412kgの超がつく程の小柄な馬体ながら、メンバー中、トップの持ち時計を刻んでのものだから、数字に現れない素質を秘めていそうだ。予定していた函館開催初日の新馬戦は競走除外の憂き目にあうアクシデントはあったが、目標とする一戦を制することはできるのか。現地で調整を続ける担当スタッフに語ってもらった。

(取材=競馬ラボ小野田)

メンバー中、最軽量の牝馬 走りの感覚は「それ以上」

-:今週の函館2歳ステークス(G3)に挑むレッドヴェイパー(牝2、栗東・安田隆厩舎)ですが、初戦の勝ち時計(1分9秒8)は、重賞へ向けて弾みのつく結果だったと思います。まず、新馬戦前のイメージ、実際に走ってみての感触はいかがでしたか。

岩本龍治調教助手:競馬前は、能力的にはいいモノを持っていたので、いい結果を出すだろうなと思っていました。前向き過ぎるところもあったので、気性がどう影響をするのかと思って見ていたのですが、行きたがる面もあったものの、いい内容だったと思いますね。ただ、確かに強かったと思うのですが、馬が真面目過ぎるのでいい意味で制御というか、乗り手に対して、もう少し従順になれれば、もっといいのでしょうけどね。そこは父の産駒らしいですね。他の面では、本当に素直でいい子なので、扱いやすいですけどね。これと言って注文もないので、本当に気性の成長だけですからね。

-:前回、6月23日の競馬を使ってからは、短期放牧には出ていたそうですね。

岩:放牧に行く前は(競走除外で)1週延びた分もありますし、こっち(函館)にも早めに入っていたので、テンション的にはギリギリだったと思うんですよ。短期ですけど、放牧に出して、放牧前よりもイライラ感はマシかなと思いますね。

レッドヴェイパー

▲16日撮影のレッドヴェイパー

-:函館に来る前というのは、4月には栗東に入厩して調整されてきたのですね。

岩:ほぼほぼ栗東で仕上げてきたので、こちらでは調整の感覚で入っていました。函館には3週間前に入れて、芝(の追い切り)にも2回入れているので、競馬の週には仕上がっている状態。競馬だと言うのに、またスライドして1週延びたのは、この小さな馬体の子にはやっぱりかわいそうでしたね。でも、数字から見ると小さいと思うのですが、この子には小さなイメージはないんですよね。今、この子の体の大きさはこれくらいかな、という見立てはあるのですが、走り出すと馬体重以上にすごく大きく見せる子なので、数字(馬体重)は別に気にしていないですけどね。

乗り味は本当にいい子なんですよ。本当にすごいバネがありますし、小さいからと言って、軽さだけじゃないんですよね。すごく力強い走りをするから、本当に上っ面だけで走っている感じじゃないんですよね。ちゃんと地面を掴んで走っている感じで、本当に410しかないのかな、という走りをしますね。

-:数字には捉われない方がいいですね。

岩:この子はその方がいいと思います。本当に440~50kgくらいの馬の走りをしますね。同時期の中でも成長は早いんじゃないかなと思いますね。そこも強みです。

課題はテンション 当日の気配さえクリアすれば勝機も

-:競馬の内容は、初戦のイメージからしか想像出来ないと思いますけど、1戦だけで言うと、2着馬(ケープコッド)に詰め寄られるところがありましたね。抽選に通れば、手強いライバルも出てきますね(ケープコッドは抽選で除外に)。

岩:僕の見立てではあの馬が一番怖いと思います。競馬が上手ですからね。出て来なかったら、また出て来なかったで、強い馬はいますけど、やっぱりあの馬が手強いのは本音ですね。前走はやっぱり内容的にはあちらの方が勝っている内容だったと思いますし、勝つには勝ったのですが、素直には喜べなかったですね。その後、あの馬の次走でもちゃんと勝っていましたから、予想通り強かったなというのはありましたね。今回は抽選がどうなるか分からないですけど、この馬も2走目でいい競馬をするかもしれないですし、競馬も上手で、サッと前に取り付けるので、変に内枠過ぎなかったらいいかなと。

-:先ほどの評価ですと、馬場が悪くなっても、ある程度こなせそうですね。

岩:そう思いますけどね。けっこう力強い走りをするので、苦にはしないと思います。あとは展開と運ですかね。運が一番大事なのかなと思いますね。

-:初戦は除外の憂き目に遭いながら、なお勝つことが出来たというのは、それはそれで珍しいキャリアになりそうですし、運も持ち合わせていそうですね。

岩:そうですね。とりあえず無事に競馬を迎えて走ってくれれば、まずはそこが大事ですね。普段はそこまで気性が悪いという訳でもないですし、基本は扱いやすい子なので、本当にレース当日がどんな雰囲気か。そこだけだと思うんですよね。

-:今度は抽選になるほど、多頭数にもなりますね。周りに馬が来た時の反応はいかがですか。

岩:走っている時だったら、けっこう(反応は)いいですね。1頭だとそこまでないのですが、やっぱり馬が来てしまうと、一緒になって行きたがるので、そこが課題ですかね。他に譲れないという気持ちがあるので、そこなんですよね。いい意味で抜きがないですよね。大丈夫だと思うんですけどね…。今回がもし長距離だったら、ちょっと問題かなと思いますけどね。

-:ただ、新馬戦は厳しいペースを先行して押し切っていますから、折り合いさえつけば、スピードが活きそうですね。話題はちょっと逸れますが、担当馬であるダノンスマッシュ(牡4、栗東・安田隆厩舎)はキーンランドカップ(G3)を予定とのこと。函館スプリントSは残念ながら除外になってしまいましたが、岩本助手も引き続き札幌に滞在されるのですか。

岩:滞在はこっちなんですよ。ダノンスマッシュがキーンランドCを使うので、ギリギリまで函館にいるはずです。札幌だとダートしかないので、ダートで調教するよりチップの方がいいので、キーンランドCに向けて乗り込みます。秋にはスプリンターズSもありますからね。 (担当馬だったロードカナロア以来)またスプリンターズSを獲りたいですね。

-:岩本さんはロードカナロアで香港スプリントを連覇していますからね。いい馬を手がけられてきた経験が豊富だと思います。

岩:そうでしたね。勝った時というのは、やっぱりまずは無事に終わってホッとした思いがあって、実感というのは後に来るから、なかなかすぐに感動は込み上げて来ないんですよね。だいぶ後になってから、勝ったんだなという感覚になるんですよね。厩舎には、本当にいい経験をさせてもらっているので、まだまだ同じ景色、見たことのない景色を見たいという思いはありますね。ダノンスマッシュもそうですが、レッドヴェイパーの函館2歳ステークスもいいチャンスだと思うので、レースまで頑張ります。

-:ありがとうございました。