リーディングジョッキー・浜中俊騎手が登場
2013/1/6(日)

浜中俊騎手
07年に騎手デビューして6年目。12月25日に24歳になったばかりの若き騎手が、岩田康誠や蛯名正義、福永祐一や内田博幸らを抑えてリーディングトップの勝ち鞍を挙げてみせた。1週間や1開催の話ではない。1年を通して、トップの座を死守してみせたのだ。
-:初のリーディング獲得おめでとうございます!
浜中騎手(以下、浜):ありがとうございます。まさかリーディングを獲れるなんて、自分でもびっくりしています。
-:年頭に話をしたときには100勝を目標とすると語っていましたよね?
浜:はい。これまで具体的な数字を目標に挙げたことはなかったんですが、昨年80以上勝てたことで、今年は100を目標にしました。
-:リーディングはいつぐらいから意識しましたか?
浜:いつかは岩田(康誠)さんに抜かれるだろうと思っていたので、最後の最後まで意識しないように心掛けていました。
結果、岩田の追撃を振り切るどころか、逆に差を広げるような形でのフィニッシュとなった。そんな浜中だが、岩田には常日頃から目をかけてもらっている。
-:岩田騎手にアドバイスをもらっているシーンもよくみかけます。
浜:はい。普段は冗談ばかり話しているけど、競馬に関して質問すればちゃんと答えてくださいます。岩田さんから進んでアドバイスをしてくださることもありますし、本当に勉強になります。
浜中を成長させ、リーディングに導いた一つの要因に、ライバルであり大先輩である岩田の助言があったことは疑いようがない。
そもそも浜中はデビュー時、なかなか勝つことが出来なかった。小学校低学年の頃には騎手をめざし、小学5年生からは乗馬を始めた。だから馬とは親しんでいた。それでも、騎手としてのスタートは、スピードに翻弄され、先輩たちの技術の前にひれ伏す毎日だった。

-:小さい頃から騎手を目指していたのですよね?
浜:生まれたのが小倉競馬場の近くで、小さい頃からよく競馬場に連れて行ってもらいました。それで自然と騎手に憧れ、乗馬を始め、競馬学校に行きました。
-:しかし、デビューしてすぐの頃はなかなか勝てなかった。
浜:正直、焦りました。そんな時、師匠の坂口(正大)先生から『新人が勝てないのは当たり前。焦る必要はない』と何度も言っていただきました。
坂口は11年に定年により引退。しかし、今でもことあるごとに助言はもらっていると言う。
-:12年は絶好調だったわけですが、それでもまだ坂口先生からアドバイスをもらっていたのですか?
浜:はい。夏の小倉で思うように乗れなかった時に、先生から『頭はスタンドに置いているつもりで乗りなさい』と言われました。レース全体の流れをみられるように冷静に考えろという意味だと受け取って、その後はそのあたりを注意して乗ったつもりです。
-:夏の小倉と言えば、開催リーディングでした。坂口先生の助言も大きく影響していたということですね?
浜:そうですね。数は勝たせてもらいましたが、それは良い馬に沢山乗せていただけたからで、本当は勝たなくてはいけない馬で何回も負けていました。内容的には満足できるものではなかったんです。そんなこともあって坂口先生に助言を仰ぎました。
-:その故郷での躍進が、リーディングに結び付いたのも間違いない。
浜:小倉は特別な思い入れのある競馬場であることは確かです。新人の年も、小倉に行ってからポンポンと勝たせていただき、なんとかやっていけるかな?という自信を持てましたから……。

また、必ずしも良い思い出ばかりではない、と続け、次のようなエピソードも語り始めた。
浜:デビュー3年目で、ある程度、自信が持てるようになった時に、落馬をしたことがありました。2番人気馬だったのですが、自分が少し強引な騎乗をしてしまったために落ちてしまった。荒っぽい騎乗になっていたことを気付かせてくれたのも、小倉競馬場での出来事でした。
-:坂口先生からもそのあたりは口酸っぱく言われているのでは?
浜:僕がまだ競馬学校生の生徒で、厩舎で研修していた頃から言われていましたね。
こう言って、苦笑した後、続ける。
浜:『乗れるようになっても、勝てるようになっても天狗になっちゃいけない』って。常にそう言われてきました。それは手綱捌きにも通じることで、勝てるようになったからといって、荒っぽい競馬をしてはいけない。改めて先生の言葉を胸に刻みました。
とは言え、勝ち気な手綱捌きが浜中の持ち味であることも違いない。
-:デビュー当初のまだそれほど勝てない頃から先輩騎手に対しても物怖じしない競馬ぶりをしていましたね?
浜:もちろん、そういう気持ちは今でも持っているし、必要だと思います。ただ、それと荒々しい騎乗は違います。口で言うほどまだ出来ていませんけど、勝利に目が眩んで危険な騎乗をするのはダメです。
-:浜中騎手の勝ち気な競馬という意味では、先出の岩田騎手も褒めていました。
浜:岩田さんには『俺を踏み台にしろ』と言っていただいていますので、競馬に行ったら、たとえ先輩でも遠慮はしませんよ。

笑う。そして、さらに続ける。
浜:あと岩田さんによく言われるのは『インコースにこだわった競馬をしろ!』ということですね。能力的に抜けている馬なら不利を受けないように外を回るのも手だけど、そうでなければコースロスが少ない方が良いのは当然です。
浜中も岩田もその手綱捌きに大きなコースロスが少ないことは誰の目にも明らかだ。もちろん、それが多くの勝ち鞍につながったのも疑いようのない事実である。
改めてリーディングに頬を緩ませる浜中だが、必ずしももろ手を挙げて喜んでいるわけではない。
-:満足できる1年だったと思うのですが?
浜:リーディングを獲るほど沢山勝たせていただいたのだからこれで不満を言ったらいけないのかもしれません。でも、勝てるレースを落としたことも多かったし、最後までGⅠを勝つことが出来なかったのも不満です。
-:100勝と共にGⅠ勝ちも年頭の目標に掲げていました。
浜:そうなんです。スリーロールス(09年、菊花賞)以来、GⅠを勝てていませんからね。ぜひ、13年はビッグタイトルも手に入れたいと思います。
-:当然、連続でのリーディングも目標の一つになると思いますが、そのために必要なことは何とお考えですか?
浜:今回のリーディング獲得で勘違いしないように、これからも少しでも上手になれる努力を続けること。そして、坂口先生にいつも言われているように、天狗にならないこと、だと思います。
リーディングへ向けてひたむきに走り続けた2012年。目標以上の成果を得たことで、浜中は自ら十字架を背負ったとも言える。2013年、若きリーディングジョッキー・浜中が更に上を目指すことを期待しよう。
(文中敬称略)


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■最近の主な重賞勝利 |
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デビュー2年目に73勝を挙げて飛躍。同年に地元の小倉競馬場で小倉2歳S(デグラーティア)を制覇。JRA重賞初勝利を挙げた。その翌年にはスリーロールスで菊花賞を制覇。3年目にして、早くもG1ジョッキーの仲間入りを果たした。 昨年3月、坂口正大調教師の引退に伴いフリーとなったが、今年は遂に中央競馬リーディングを獲得。次代のトップジョッキーの筆頭候補となり、その注目度はうなぎのぼりだ。 |
