関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

榎本優也調教助手

昨年はこの夏場を休養に充てたジャスタウェイ(牡4、栗東・須貝厩舎)だが、今年はエプソムCから関屋記念に参戦というローテーション。新潟マイルは2着だった新潟2歳S以来で、意外やマイル戦もNHKマイルC以来ということになる。競馬ラボユーザーにはすっかりお馴染みの榎本優也調教助手に、参戦の意図や秋に向けての課題、もちろん中間の状態など等身大のコメントを並べてもらってきた。

エプソムC後の経緯と状態

-:関屋記念に出走を予定しているお馴染みのジャスタウェイと榎本助手です。6月の前半に使ったエプソムC以来、今回は久しぶりのマイル戦ですが、エプソムCを使った後の状態から教えてください。

榎本優也調教助手:使った後、すぐに放牧に出しまして、3週とちょっと前に栗東に戻って来ました。7月の真ん中くらいですね。

-:帰って来た時の雰囲気というのはどうでしたか?

榎:特に変わらず、しっかりリフレッシュできたなという感じでしたね。

-:エプソムCで体重が増えていたのは、戻っていたという感じですか?今回は若干増減していた、あの体を維持してる感じでしょうか?

榎:エプソムCも使う前は510キロ前後で、こっちでずっと調教してたんですけれど、今も同じぐらいで来てますね。

-:ということは、輸送でだいぶ減ったということでしょうか?

榎:このあいだはそうなんです。それは予定外でしたね。思いの外、当日も気負うところがあったりしました。それもあって、ゲートで突進して、出遅れて、というロスがあったんですけど、今回はその辺をちょっと気をつけてやっていこうという感じですね。

-:出遅れ気味だった分、コースロスなく最内を走って、あわや勝ったかと思わせるような素晴らしい脚だったので、ここに来てようやく、ジャスタウェイの体質強化というか、本格化の兆しが見えてきていると思うんですけど、エプソムCが終わったあと、調教に乗っていて何かこういうところが良くなったという点はありますか?

榎:エプソムCの前も良かったですけれど、またちょっと雰囲気が変わってきたんです。前ほどは乗り辛くはないんですけど、思っているより時計が速くなってしまうという感じですね。ふわふわ走ってるんですけれど、時計が出ているみたいな。

-:ストライドが伸びたりとか?

榎:そのように感じます。

-:良くなった原因というか、箇所というのは、トモとか後ろ脚の蹴りに力強さが出てきているのでしょうか?

榎:そう思いますね。2歳の時は、少し馬場が悪くなっただけで全く時計を出せなかった馬なので。そういうところも徐々にパンとしてきて、力をつけてきたのだと思います。





-:これまでは、どちらかというとゆっくり走って、終いだけ最速くらいの脚で走るのがジャスタウェイの良さみたいなところがありましたけれど、今後は違う競馬ができるようになってくるかもしれないですね。

榎:そうですね。前走も結果的には後ろから行くことになりましたけれど、きっと祐一さん(福永祐一騎手)も真ん中くらいで折り合いをつけよう、という乗り方がしたかったと思うので。

-:そう考えると精神的に気負ってた部分というのがすごく悔やまれますね。

榎:そこは失敗したかなと思います。

-:その辺、今回に向けて何か微調整されるところは?

榎:エプソムCの時は1週前と当週と、2週続けて乗ってもらいましたけれど、そうすると結構スイッチが入る賢い馬なので。今回は今日(31日)、またがってもらったので、来週に僕が乗ってサッとやる予定です。

-:ジャスタウェイってもともと調教で折り合いがつく乗りやすい馬だったでしょう。レースでもそんなに引っ掛かっていくようなところもなかったし、それがだんだんパワーアップしてきて、エプソムCの前くらいにちょっと行きたがるようなところが出てきて。それを“引っ掛かる”と言ったら悪いイメージになるけれど、全体的にパワーアップしているので“以前よりスピードを出して走れるようになった”と解釈したら、これからは後方から行くというレースだけではなくて、もっと器用なレースができるようになるかもしれないですね。

榎:そうですね。

-:それをエプソムCで見たかったけれど、結果的に出遅れて最内に突っ込むという、仕方がない2着だったので、今回こそ今のデキを証明するレースになってほしいですね。

榎:あんまり偉そうに言うのもあれですけど、力があるのは分かりきっている話なので、もう少しスマートに競馬ができるようになれば良いですね。

2歳時以来となる新潟マイルについて

-:2、3歳戦から力を出していたけれど、もう一歩成長した時の姿が素晴らしかったのがハーツクライだったので。それをジャスタウェイが引き継いでくれていたら、むしろ今までより、これからの方が楽しみですね。

榎:体型的にもすごく長く見えるようになってきたというか。実際に伸びたのかどうかは別としてですけれどね。今回も正直に言うと“マイルを使ってもいいのかな?”というくらいの気はしてますね。競馬が上手になれば、距離も延ばしていきたいし、延ばしていけると思うので。楽しみですね、これからも。

-:そうは言っても競馬ファンからしたら夏の時期にジャスタウェイを見れるなんていうことは贅沢な話で、出てきてくれるのは嬉しいけれど、馬にとったら今年の栗東ってすごく暑いじゃないですか。夏負けの心配とか、その辺はどうですか?

榎:思っていたよりは平気ですね。むしろエプソムC前の方が暑くなり始めてきた時期なので、堪えている雰囲気はあったのですけれど、今は今日くらいの時計を出しても飼葉をペロッと食べていましたし、もう元気ですね。

-:内臓とかは、ちゃんと発汗して温度調整する機能がうまく働いて、大丈夫だと。

榎:そうですね。

-:夏負けして体調が悪くなったら、汗をかかなくなりますからね。パドックで見ている人は汗をかかない方が良いと思うかもしれないけれど、今の時期に限っては、ちゃんと汗をかいてくれる方が適正ですからね。今回の関屋記念のパドックを見る時も若干発汗をしているくらいで良いと思います。

榎:そう思いますね。

-:榎本助手としては、今回のレースのポイントはどこだと思いますか。今まで13戦して2勝。2着が3回。結構、勝ち味に遅いじゃないですか。複勝率は5割くらいあるのだけれど、脚質的に後ろから来てるから、取りこぼしが多かったというのが正直なところで。パワーアップしてどれだけ走れるか。

榎:振り返ってみると、いつの間にかそうなっていたというか、今回と同じ新潟での新馬戦と2歳Sではそんなに後ろからになるとは思っていなかったので。2歳戦と今回を一緒にするのはおかしな話ですけれどね。体もしっかりしてきて、調教でも動けるようになって、競馬で力を出せるようになってきたので、もう少し上手に競馬をしてくれたら良いという気持ちですね。



-:今の新潟で心配な事が2点あって、ひとつは時計。もうひとつは、去年の関屋記念の勝ち時計が一気に一秒くらい速くなっているんです。今までは33秒台とか、32秒台での決着が多かったのだけれど、去年のドナウブルーだけ31秒5だったんです。ドナウブルーがそれだけ速かったというよりは、明らかにそれだけ馬場が硬かったということで。ジャスタウェイは軽い馬場の方がいいし、今までマイルの成績は結構良いけど、速い勝ち時計はないじゃないですか。そこが未知数だからファンも気になるところではあると思うんですよ。そこは榎本助手としてはどうですか?

榎:どうでしょうね。時計に関してはやってみないとわからないですからね。速い流れを経験していないわけではないので、上手に走ってくれれば結果はついてくるんじゃないかと思います。

-:NHKマイルとアーリントンCは2戦とも時計がかかっていたじゃないですか。アーリントンカップは36秒台で、6着だったNHKマイルは35秒台後半。それとは比較にならないくらいに馬場が速くなった時に、32秒台、もしくはその前半くらいの決着でも走れるタイプですか?

榎:どうですかね。今なら走れそうな気もしますけどね。

-:今までは2000mとか1800mとかマイルよりは長いところを使っていたので、距離が長過ぎる心配はないけれど、位置取り自体は少し後ろになりそうなイメージもあるじゃないですか。その辺はゲートさえちゃんと出てくれたら置いて行かれることはないですか?

榎:調教で感じる雰囲気では、全然心配していないですね。

-:むしろエプソムCで見れなかったものを、ここで見たいです。

榎:そうですね。

ジャスタウェイの榎本優也調教助手インタビュー(後半)
「ハーツクライ産駒のパイオニアとして」はコチラ→

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【榎本 優也】Yuya Enomoto

競馬ラボでは『トレセンLIVE!』のコーナーでコラムを担当。
大の競馬ファンである父親の影響で、幼い頃から阪神、京都競馬場へ足を運ぶと、武豊騎手に憧れてジョッキーを志すように。視力が足りず受験資格をクリア出来ず、断念せざるをえなくなったが、競馬関係の仕事に就きたいという思いに変わりは無く、牧場勤務を経て、25歳の時にJRA厩務員課程へ入学し無事卒業。
しばらくの待機期間を過ごし、09年5月に須貝尚介厩舎で待望の厩務員生活をスタート。 7月には持ち乗り助手となり、それ以来、2頭の競走馬を担当している。

調教助手としては、アスカクリチャン、アスカトップレディ、クリーンエコロジー、コレクターアイテムなどを手掛け、2012年上半期には担当するジャスタウェイがアーリントンC(G3)を制して人馬ともに重賞初制覇。NHKマイル、日本ダービーとG1の舞台を経験した。

現在は厩舎の屋台骨を支える傍ら、趣味である一眼レフカメラで厩舎の愛馬たちを撮影。関西のトップステーブルに登り詰めた須貝尚介厩舎のスポークスマン的な役割を果たしている。