関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

友道康夫調教師

昨年は牝馬3冠でジェンティルドンナと死闘を繰り広げた後にクビ差の2着で、今春はヴィクトリアマイルで初めてG1を制したヴィルシーナ。この馬の存在なくして今年もエリザベス女王杯を語ることはできないだろう。先日のニコニコ生放送でも佐々木オーナー自らが当レースに懸ける意気込みを語ってくれたが、今期一番の勝負に向けて準備は万端。直前は友道康夫調教師にG1・2勝目に向けての手応えを伺ってきた。

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掲示板を外した2戦を振り返って

-:この秋もエリザベス女王杯に出走するヴィルシーナ(牝4、栗東・友道厩舎)ですけれど、前回の京都大賞典を含め、最近は逃げる競馬が2回続いていますね。

友道康夫調教師:春はマイルを使っていたから、やっぱりああいう格好になったと思うんだよね、行きっ振りが良くて。本当は2~3番手ぐらいの競馬をして欲しかったけどね。

-:2~3番手から長く良い脚を使うのも味だと思うのですけれど、ある程度は差す脚もあるじゃないですか。個人的にはもうちょっと後ろでも面白いかなと思っていたので、特に安田記念は、もしかしたら最後方から追い込んでくるのかなと思ったら、真逆だったのでビックリしました。

友:あれは想定外でしょう(笑)。ジョッキーには口酸っぱく伝えていたんだけれど……。

-:それでいて、京都大賞典のレースも押し出される感じでしたね。前半もあのまま行ってたらスローで、あの位置からで良かった、となったのでしょうが。

友:外から馬が来たし、押し出される格好。展開も前にはキツかったね。

-:ゴールドシップが動くものだから、みんなが釣られて動いてしまうという、ゴールドシップが1番人気ならではの展開でしたね。

友:そう、釣られて。そういう展開でしたね。でも、そんなに負けてないし、最後もそんなに真剣に追ってないしね。



-:明らかに本番のエリザベス女王杯を想定してのレースでしたよね。そこから使っての上積み、もしくはレースの疲れなどはありましたか?

友:疲れも全くないし、1回使ってガス抜きもできています。昨日(10/30)、岩田君に乗ってもらいましたよ。前走の京都大賞典の時の2週前の追い切りに久しぶりに乗ってもらったのですが、その時はやっぱり馬も力んで行きたがってたけれも、昨日は前半からすごく良い感じで折り合いも付けて乗っていたしね。

-:3頭併せになってましたね。2歳の黄菊賞に登録しているヴォルシェーブ、同じ馬主さんの所有馬と併せる形で、ヴィルシーナが一番後ろから行って、ペース的には2歳馬に合わせている訳ですから、ゆっくり入って?

友:ゆっくり入って、それでいて、ヴィルシーナは折り合いが付いていました。

-:最後は距離があったものですから、ヴィルシーナが内に入って、ヴォルシェーブが真ん中という形での追い比べで、意外にも……?

友:ヴォルシェーブが頑張って、嬉しい誤算です。

-:ヴィルシーナにとっても前半の折り合いというか、ゆっくり走る練習ができたし、終いもしっかりと反応を確認できたというところで、エリザベスに繋がる1週前追い切りでしたね?

友:ジョッキーもその辺は考えて乗ってくれたしね。





-:上がってきてからの岩田ジョッキーのコメントはどんなお話でしたか?

友:「前回乗った時に比べれば全く力みもなく、なおかつ追ってからの反応も良かったですよ」と言ってましたね。

-:今度は岩田ジョッキーも差す競馬を意識するんじゃないでしょうか?

友:ええ、そうだと思いますよ。それでも、最後方からはないと思うよ。今の京都の競馬じゃ、後方から行ったら厳しいもん。

-:新聞でもそういうコメントが出ていましたからね。「今回は瞬発力勝負で」と。僕らはそれをすごい期待をしていまして。

今年の最大目標はエリザベス女王杯

-:先週、競馬ラボの「ニコニコ生放送」でアンカツさんと佐々木さん、僕らが討論する形で出させていただいて、その時に僕とアンカツさんは「差しても良いんじゃないかな」という話をしてたら「4~5番手ぐらいまでじゃないですか」という話をオーナーはしていましたね。

友:あの馬はそんなにスパッとキレる脚がないから、一瞬の脚は。

-:体だけ見ていると、イメージではそんなに今まではタメているレースがないことと、2~3歳時の体と、今のパワーアップしている体では違うので、もしかしたらピュッと来るタイプじゃないかなと。

友:でも、今までの競馬を見たら、そんなにタメて一瞬のピュッとキレる脚を使うタイプじゃなくて、相手なりに走る感じの馬なので。

-:そういうイメージが2~3歳時にはあったんですけれど、成長して体が良くなってきてるじゃないですか。だから、新しいページをめくりたくなるというか……。でも、スタートが良いんですよね、この馬は。下げようと思ったって。

友:それを確かめるなら、前走もしくは安田記念だったんですけどね……。

-:強い相手とやった時にどうなのかと。それをどこかで見せて下さい。

友:そうだねえ。ハナばっかり行ってたら勝てる訳ないしね。性格や特徴を活かせるような競馬をさせてあげたいです。



-:古馬牝馬で牝馬限定のレースと言ったら、ヴィクトリアマイルかエリザベス女王杯という2つの選択肢しかなくなるじゃないですか。その中でどうしても牡馬混合のレースを使っていかないといけない難しさがあると思うんですけれど、そういう意味じゃエリザベス女王杯はどうしても獲りたい2冠目ですよね。

友:去年のことがあるから、やっぱり何とかして獲りたいですよね。

-:去年はレインボーダリアに敗れましたが、馬場に苦しみましたか?

友:結局、2着に負けたけど、逆にいえば、あの馬場で2着に頑張ってるんだから、あの馬は自分の力を100%出していると思うんですよね。ただ、ああいう馬場がもっと得意の馬がいたというだけで、ああいう馬場でも自分の力を100%出してるからね。


「去年は秋華賞が一番の目標で、その余力でエリザベスという感じだったけど、今年はエリザベスが一番の目標なので」


-:見た目的に言ったら、馬場の悪いところは合わなさそうなのがヴィルシーナなんですけれど、蹄が薄かったりもしますよね。

友:そうなんだけど、あの馬に関して言えば、どんな条件でも競馬に行けば真面目にというか、自分の力を100%以上発揮してくれるというのが一番の良いところですよね。春はマイルだし、秋は今度、また2200になるし、競馬場も違う。環境が変わっても、レースであの馬の持っている力はいつも100%、それ以上に出してくれるからね。

-:それでいて、壊れないというのが素晴らしいですよね。

友:いつも言うけど、本当に無駄なことはしないですよね。下見所で周回してて、止まれの合図が掛かるまで、全然戦闘モードに入らないですから。止まれの合図が掛かったら、あそこでちょっと変わるんですよね。調教でも去年からそんなにメチャクチャ時計が出るタイプじゃなかったからね。

-:今回も期待できそうですね。ローテーションを見たら、先生も狙ってきているというのが分かりますからね。

友:去年は秋華賞が一番の目標で、その余力でエリザベスという感じだったけど、今年はエリザベスが一番の目標なので。去年のエリザベスに臨む臨戦過程と今回は全然違うし、何とか獲らせてあげたいですよね。

-:1戦1戦真面目に走るヴィルシーナなんですけど、そういう意味では体重の変動を気にされているファンもいると思うので、今の馬体重は?

友:前走はプラス16だったのかな。それは太目感じゃなくて成長分だと思うので、今回もそんなにマイナスじゃないと思うんですよ。

-:1ケタ台のマイナスで太目残りじゃないと判断して良いですね。

友:別に前走ぐらいの体重でも全然太目じゃないと思うしね。背も伸びているし、筋肉も付いているし、その分の数字だと思うんで。まあ、仮に同じ体重だったとしても、全然太目感はないと思いますよ。

ヴィルシーナの友道康夫調教師インタビュー(後半)
「オーナー期待の2歳牡馬ヴォルシェーブ」はコチラ→

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【友道 康夫】Yasuo Tomomichi

1963年兵庫島県出身。
2001年に調教師免許を取得。
2002年に厩舎開業。
初出走
02年11月30日 3回中京1日目1R ランドチャレンジ
初勝利
02年12月1日 3回中京2日目6R インターマーベラス


■最近の主な重賞勝利
・13年 ヴィクトリアマイル(ヴィルシーナ号)/13年 目黒記念(ムスカテール号)/13年 新潟大賞典(パッションダンス号)/12年 クイーンC(ヴィルシーナ号)


大学時代に馬術部に入部したことが契機で、競馬と関わりはじめ、競馬会へ。いずれも名門・浅見国一厩舎、松田国英厩舎での厩務員・調教助手を経て、2002年から厩舎を開業。 2008年にはアドマイヤジュピタで天皇賞(春)を、翌年にはアンライバルドで皐月賞を制し、一躍、栗東のトップステーブルの仲間入りを果たした。 自身が手がけたハルーワスウィートの仔であるヴィルシーナでクイーンCを、ハルーワスウィートの弟にあたるフレールジャックで昨年のラジオNIKKEI賞を制覇。3年振りのクラシック制覇を狙う。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。