平林雅芳の目

トピックス

日曜中山11R
朝日杯FS
芝1600m
勝ちタイム1.35.1

勝ち馬セイウンワンダー
(牡2、栗東・領家厩舎)
■・・・内ラチを味方に伸びに伸びたセイウンワンダー!!

中山のパドックは、スタンド側から観ると馬が光を背にするので、非常に見づらい。
いつもの報道用のスペースを離れて電光掲示板の方から見てやろうと、ひとレース前からスタンバイ。
えらく今日は人の出が少ないなと思っていたのが、いつの間にか人また人と集まってきて、GⅠの雰囲気が出てきた。
しかし保護柵いっぱいになるはずの横断幕が、今日は少なすぎて向こうが透けて見えるほど。 『あまり人気がないレースなのかな~?』と思ってしまう。
スタンドの方でレースの終焉を迎える騒音が聞こえる中、16頭の馬たちが続々とパドックへと入ってきて、男気NO.1の頂点を極める戦いが始まった。

せっかくいいポイントで馬を見れるのだからと、今日は1頭ずつメモとチェックを始めた。
①ミッキーパンプキン。何か心ここにあらずといった印象だ。
②シェーンヴァルトは、列の一番後ろでの周回だが、ちょっと頭の高さが気になる。あとで引き返しという馬具を外したら、それは解消されたのだが・・。
③セイウンワンダーは黒光りする馬体。後脚の盛り上がり方が凄い。内に闘志を秘めた感じで静かに回っている。
⑤ブレイクランアウト、線が細い馬である。一見は牝馬かと思えるほど。ちょっと廻りを気にしているような印象も見られるし、口の下顎で遊ぶというかちょっと神経質にしている。
⑪フィフスペトルは悠々の馬体だ。丸々していてこの馬も後脚が凄い馬である。
その後ろの⑫ゲットフルマークスは、ちょっとチャカつく感じで集中心が欲しいところだ。
⑨エイシンタイガーに⑭ブラストクロノスもちょっといい感じの体だ。
でも何度も目の前を通る馬を見て○をつけた馬名は、③⑤⑪の3頭であった。

パドックの中へ、いつもどおりに厩舎関係者やオーナーサイド、生産者たちが入って、芝生の上で周りを廻る馬を見ていた。
その一番中央側で領家師が愛馬を見やっていた。
何度もなんども周回するセイウンワンダーを見ている姿は、ほかの数十人の中でも目立つ。
その姿勢からは、凄い自信がみなぎっているように感じられた。
『最高の状態に造ってきたから負けるわけがない、俺の馬が一番強いのだから。』そんなオーラが出ているようだった。
そばに確か土川理事長がいたようだが、臆せずごく自然体で話をしながら、その視線の先にはセイウンワンダーがいる、そんな感じだ。
常日頃から見知っている領家師とは違って、職人が仕事を果たした達成感をみた思いであった。
『何か勝負あったのかな~』と思ってパドックを出て行った馬たちを追いかけ、馬場へと向かった。

返し馬で、ブレイクランアウトが少し初動で上下の動きをするので、思わず鞍上を場内のミニ歓声が気遣っていた。
その先を、やや頭を高くしたセイウンワンダーがキャンターで1コーナーを通過。
無事に返し馬も終わり、2階の調教師席の隣りにある厩舎関係者席のそばで発走を待った。
スタンドが黒く埋まっていた。
4コーナーの方からの夕日がまぶしくて仕方がない。

そしていよいよ60回の朝日杯FSのスタートが切られた。

ミッキーパンプキンも普通のスタートを切ったのだが、外から蛯名Jがゲットフルマークスを好スタートから内へ寄せてきた。
ちょうど2コーナーのカーブにかかるあたりで内が窮屈になるところで、ミッキーパンプキンは下げざるを得ない状況となった。
前で4頭ぐらいが先行集団を作り、ブレイクランアウトは後ろから3頭目ぐらいで外へ出し気味。
そのちょっと前の内にセイウンワンダーが位置取った。

3コーナーに入る前ぐらいから、外めからブレイクランアウトがスーッと上がっていくのが見えた。
その内の前にも同じ勝負服。
ルメールJが騎乗のフィフスペトルがいた。
そのちょっと後ろの内で岩田Jセイウンワンダーが我慢していた。
4角手前で大外へキャロットの勝負服の2頭が並ぶように上がってきた。
直線入り口で馬群が凝縮されてきた。
横一線の外では、ルメールJが少し馬を下げてアクシデントを避けた格好だ。
その時点ではブレイクランアウトの勢いが凄く、先頭に躍り出る感じだった。
内目から真中に出してきたセイウンワンダーも勢いがよく、後1Fからは進路を内目にとって最内へとへばりついた。
いったん先頭にたったブレイクランアウトに、大外から矢のように伸びてきたフィフスペトルの勢いが凄いのが見えた。
最内では岩田Jのアクションある追い方で、セイウンワンダーも伸びてきた。
『中のブレイクランアウトが一番伸び脚が悪い、外かいや内だ、最内だ』と見たところがゴールだった。

階段を駆け足で降りながらスローの映像を見た。
やはりセイウンワンダーが僅かに出ているのが判った。
馬を納める枠場へと向かった。
領家師が喜びと共にやって来るのが見えた。
すっと握手をした。勝者には喝采をがルールだ。
こちらも力を出し切ったものであり、着差は少なくとも今日は完敗なのだから。
完璧に力を出し切った、岩田Jの馬をよく知っている乗り方。
セイウンワンダーの競馬を何度も観て知っているが、馬が若いせいなのだろうが、追われてから左右にぶれるところが他の馬よりキツイ。
前回は大外へ出て外ラチ沿いを走らせたが、今回は右回り。
最初から最後は内へ、一番内まで持っていけたらと考えていたに違いない。
それがあっという間にできたこと。
そして右にラチを壁にしてしっかりと追え、最後の最後までセイウンワンダーの伸びを出せたことが勝利に結びついたのだろう。
ここらは馬との阿吽の呼吸。
癖をよく知っているから当然の事だろうが、仕事をしたということだ。
仕上げた調教師、力を出し切った騎手。
ここまで作ってきた厩舎関係者。
当然の勝利であり、もぎとったものである。
後は次週のラジオNIKKEI組との手合せであろう。
来年はもっと強くなるだろうこの馬、嫌な馬を相手に競馬しなくてはならないと武者震いするものであった。

最後に、武豊Jとレース後に二人だけで話した感触を伝えておきたい。
前回同様に負けても、『まだある』のニュアンスが今回も伝わってきた。
パトロールビデオを何回見ても、手前を替えきっていないように見受けたが、やはり同じことを彼も言っていた。
いったん先頭に立っていながら、それを守りきれなかったのは、本当に力を出し切っていないからだろう。
パドックで廻りを気にしている様子とか、まだ子供っぽい面がかなり残っている馬。来年の成長を待ちたい。
勝ちにいってのこの結果だから仕方ない、そんな朝日杯FSでした・・。