【JRA賞】年度代表馬モーリス 次戦明言せずもドバイ参戦か?

1月25日(月)に東京都内ホテルで、日本中央競馬会(JRA)主催の2015年JRA賞受賞式が行われた。

競馬と馬に関する特に優れた業績に対してその栄誉をたたえ、感謝の意をあらわすために設けられた『JRA賞』は、昭和62年から始まり今年で29年目を迎えた。表彰行事をイベントとして行う事で、競馬と馬をファンや競馬関係者はもとより、一般社会へも広くアピールし、競馬の市民性やステータスの向上と馬事の普及を図ることも大きな目的としており、今年も受賞者をはじめ多くの関係が招かれ盛大に行われた。

式は始めに日本中央競馬会理事長の後藤正幸氏、農林水産大臣の森山裕氏の挨拶から始まり各賞の受賞式へ。関係者の喜びの声と共に、2015年を盛り上げた受賞馬のローテーションの発表に注目が集まった。

一番の注目はやはり年度代表馬/最優秀短距離馬のタイトルを獲得したモーリス(牡5、美浦・堀厩舎)。吉田和美オーナーは「思い出のレースは香港マイルです。レースが終わった後はみんなで輪になって喜んだとても思い出深い一日でした。この馬は面白い馬で感情を集中力にかえられるアスリート。やっとこの馬の素質が開花した本当に幸せな一年でした」と喜びが溢れるスピーチを披露した。

そして注目が集まる今年の動向に関しては、管理する堀宣行調教師が「この馬の長所は一生懸命走ることです。短所はそれゆえに体に疲れが溜まりやすいところですね。そのため段階的に調教を強め、やり過ぎないことに気をつけてきました。今はノーザンFしがらきで休んでいるのですが、まだ完全に疲れが取れ切れていないので、帰厩時期や目標は未定です」と慎重な姿勢をのぞかせた。また、「マイルの枠から大きく逸脱することはないでしょう」と前置きしつつも、「国内のマイルG1、香港も勝てたので、これからは種牡馬としての価値を高められるようにしたい」とコメント。ドバイターフなど3月に行われるドバイ国際競走も視野に入っているようだが、あくまで、馬に合わせて今後のローテーションを決めるよう。明確な次戦のメドが明らかになるには、もう少し先になりそうだが、今年はマイル以外の条件に矛先を向ける可能性もありそうだ。

JRA賞

吉田和美オーナー、JRAの後藤理事長らとモーリス関係者


JRA賞

JRA賞

各受賞馬の関係者の喜びの声と、今後の予定は以下の通り。

●「最優秀4歳以上牡馬」ラブリーデイ

今後の予定:産経大阪杯⇒香港・クイーンエリザベス2世C⇒宝塚記念

金子真人ホールディングス(株)の金子真人オーナー
「5歳になって初めて重賞を勝って、その後重賞6勝と本当に驚きました。2015年はラブリーデイのおかげで充実した一年を過ごすことができました」

池江泰寿調教師
「元々デビュー当時から能力が高いことは分かっていましたが、気正面で難しいところがありました。ただ2014年の年末あたりからその点が良くなって、一気に素質が開花した感じです。今年はこの馬のパフォーマンスが発揮しやすい、2000m前後の距離にこだわってレースを選んでいこうと思います」

●「最優秀4歳以上牝馬」ショウナンパンドラ

今後の予定:産経大阪杯⇒(ヴィクトリアM)⇒宝塚記念

国本哲秀オーナー
「馬主になって約30年になりますが、当時からジャパンCは日本のレースではないというくらいに思っていたので、そのレースに私の馬が出走して勝つなんて考えられなかったです。今の社会は女性が強いでしょ。パンドラはそんな今の時代にマッチしていると思います。来年もこの舞台に立てるように高野先生に頑張っていただきたいです」

高野友和調教師
「責任重大です。上半期は宝塚記念を最大目標に進めていきます。ヴィクトリアマイルを使うかどうかはわかりませんが、おそらく使うことになるでしょう」

●「最優秀3歳牡馬」ドゥラメンテ

今後の予定:中山記念⇒(ドバイ遠征)

有限会社サンデーレーシング吉田俊介代表
「皐月賞、ダービーは本当に強かったです。ダービーの後は長い間お休みを頂いていましたが、強い馬なので今年は海外に行かなくては、とは思っています。凱旋門賞も含め、選択肢には入っています」

堀宣行調教師
「今年の秋じゃ完成しないような気がするので、まだまだ未完成で成長の余地があります。現在はまだ帰厩して間がないので、まだまだ太くて乗り込み量が不足気味です。今の体重が成長分なのか、太めなのかは半信半疑といったところですね。ここから馬に合わせながらシッカリ調整しています」

●「最優秀3歳牝馬」ミッキークイーン

今後の予定:阪神牝馬S⇒ヴィクトリアM

野田みづきオーナー
「昨年のミッキーアイルに続いて2年連続のG1制覇で、夢のような一年でした」

池江泰寿調教師
「今はノーザンFしがらきでリフレッシュ中です。今年はエリザベス女王杯が目標。上半期はヴィクトリアMを目指し、その後、結果次第で安田記念か宝塚記念を狙いたいと思っています」

●「最優秀2歳牡馬」リオンディーズ

今後の予定:弥生賞⇒皐月賞

有限会社キャロットファームの高橋二次矢社長
「朝日杯FSは、大変力強い走り方で『頼もしい』の一言でした。今年はさらなる上を目指して、クラシックを獲れるように頑張って頂きたいです」

●「最優秀2歳牝馬」メジャーエンブレム

今後の予定:クイーンC⇒桜花賞

有限会社サンデーレーシング吉田俊介代表
「阪神JFは好スタートから早めに抜け出す競馬だったので、直線はソワソワしましたが終わってみれば本当に強かったです」

●「最優秀ダートホース」コパノリッキー

今後の予定:フェブラリーS

小林祥晃オーナー
「昨年のフェブラリーSはもっと突き放して勝つかと思っていたので、心配しましたよ。今年の目標はフェブラリーS三連覇になりますが、そのためには隣の武豊騎手にかかっていますので、そこはジョッキーに聞いてみてください」

武豊騎手
「人馬ともにベストを尽くします。あとは、オーナーの風水にかかっていますね(笑)」

●「最優秀障害馬」アップトゥデイト

今西和雄オーナー
「佐々木調教師をはじめ、(生産者の)ノーズヒルズの方々、とにかく関係者の皆さんに感謝しております。本当にありがとうございます。この馬は障害馬ですので、今年も毎回無事に完走してほしいと思います」

●「平成27年度顕彰馬」オルフェーヴル

有限会社サンデーレーシング吉田俊介代表
「いつもドキドキしながら見ていましたが、本当に強い馬でした。思い出に残るレースは勝っても負けても引退が決まっていた、2013年の有馬記念での8馬身差の圧勝。本当に最後はハッピーエンドで終わってよかったなと思っています。これからは父として活躍する仔を多く出す事を期待しています」

池江泰寿調教師
「オルフェーヴルはサンデー系にしてはボリュームと弾力がある馬でした。そういう父の良い所は産駒を見ても受け継がれているようなので、非常に楽しみです」

主戦の池添謙一騎手
「やはり憧れだった日本ダービーだけでなく、3冠レースを全て獲らせてくれた馬だから感謝の気持ちで一杯ですし、顕彰馬として選ばれて嬉しく思います。あと自分自身に関しては、2015年は久しぶりにG1レースも勝てましたし、楽しみな現3歳牝馬にも出会えたので2016年は、僕がイレ込み過ぎないように頑張ります」



続いては騎手、調教師などに2015年に優秀な成績を収めた人に贈られるJRA賞。昨年に続き今年も『MVJ、JRA最多勝利騎手』を獲得した戸崎圭太騎手は「昨年はG1を2つ勝たせて頂きましたが、勝ち鞍は減らしてしまったので、その点は悔いが残っています。ただ2年連続で賞を獲れたことに意味があるのかなと思っています。関係者の皆さんに感謝しています。今年は、ひとつひとつ大事に乗って3年連続でこの賞を獲れるように頑張ります」と更なる飛躍を誓った。

そして今年の3月から初の外国人JRA騎手になった、ルメール騎手が「JRA最高勝率騎手」を、さらにデムーロ騎手が「JRA最多賞金獲得騎手」を獲得し、注目が集まった一年目からしっかりと結果を出した。JRA賞受賞についてルメール騎手は「昨年JRAの騎手になりました。とてもうれしい。今年は日本ダービー勝ちたいのと、漢字読めるようになりたいです」と笑顔で語り、デムーロ騎手は「(G1・4勝について)すごいですね。絶好調です。今年は昨年と同じくらい勝ちたいです。とにかくいっぱい勝ちたい!今年も頑張ります」と喜びを爆発させていた。二人とも既に有力馬を多く抱え、現在は西からも東からも引っ張りダコの大人気。2年目を迎える今年は昨年以上の結果が期待できそうだ。

各受賞馬の関係者の喜びの声は以下のとおり。

●「最多勝利障害騎手」五十嵐雄祐騎手
「昨年は重賞もオープン特別も勝てなかったのに、なぜ僕自身ここに立てているのか不思議ですが、多く勝たせて頂いた関係者の皆さんに感謝しています。今年もいっぱい勝ちたいです」

●「最多勝利新人騎手」鮫島克駿騎手
「自分自身まだまだ未熟ですが、これだけ勝たせてもらえたのは、関係者の皆さんのおかげです。今年は騎手としてもっとレベルアップして、昨年より多く勝てるように頑張ります」

●「最多勝利調教師/最高勝率調教師」堀宣行調教師
「なるべく良い状態で出走させることと、馬を育てていくことの両立が大切だと思っています。まだまだ季節によって成績のムラがあるので、牧場との連携をもっと強めて共通意識をもてるようにしていきたいです。まだまだ未熟な部分もあるので向上心を持って取り組み、少しでもファンの皆様の競馬の信用を上げていけるようにしていきたいです」

●「最多賞金獲得調教師」池江泰寿調教師
「馬主様、牧場関係者の皆様、スタッフの皆に感謝の気持ちでいっぱいです。これからはファンの皆様にもっと楽しんでもらえるように、魅力ある競馬を提供していきたいです」

●「優秀技術調教師」松永幹夫調教師
「馬主様、スタッフ、牧場関係者の皆様のおかげで頂けた賞です。次はここにいる池江先生や堀先生のように、代表馬を引き連れてこの場に戻ってきたいです」

●「JRA賞馬事文化賞」受賞作【颶風の王(ぐふうのおう)】 河崎秋子氏

「第1回の受賞作品である宮本輝さんの【優駿】は、本当に素晴らしい作品で、その作品と同じ賞を頂ける事は光栄です。馬は他の動物に比べても頭の賢い生き物で、携わる人によって大きく変わると思います」