戦った相手が違う、ヤマカツエースが貫禄勝ち!【平林雅芳の目】

ヤマカツエース

17年3/11(土)2回中京1日目11R 第53回金鯱賞(G2)(芝2000m)

  • ヤマカツエース
  • (牡5、栗東・池添厩舎)
  • 父:キングカメハメハ
  • 母:ヤマカツマリリン
  • 母父:グラスワンダー

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中京競馬場は風が冷たい。だが馬場に向いたテラスは、ポカポカな陽気となって観戦に心地いい。東西の名手が集っているせいか、ファンの数も多い。
朝から声援が飛ぶ、そんな中で1番人気の支持を受けたヤマカツエースが中団の少し前の絶好の位置で進み、4角では2列目を抜群の手応えで廻る。直線半ばから外目を進出して、最後は手綱をシャクるだけでの所作で、逃げ残るロードヴァンドール以下に圧倒的な差をつけてのゴールだった。これで次なるステージの大阪杯へ向けて、いい滑り出しをした様である。

関東からルージュバック、そしてヌーヴォレコルトの牝馬が、中山牝馬Sが日曜にあるのに西下。4歳の若さを誇るプロディガルサンと人気を集める。そして関西からはステファノスやヤマカツエースと、やはり王道を歩んできた馬が迎え撃つ構図。これに春の小倉で善戦をした大賞典組と、ハンデ戦らしく大混戦の前売りであった。
エレベーターで乗り合わせた大竹師にズバリ訊いてしまう厚かましさ。元トラックマンだけに、思うと口をついてしまう。《何故、中山牝馬Sでないのですか?》と。それに嫌な顔もせずに師は『ハンデがけっこう重いんですよ…』であった。56キロのマジックタイムぐらいいきそうな斤量な様である。

しかしファンは全てを知っている。ヤマカツエースが混戦を断つ1番人気の支持をする。あの有馬記念で3着のゴールドアクターに迫っていく最後の脚。1頭際立つ脚色を見せていたのをちゃんと見逃さず、地力強化のヤマカツエースを支持するのである。
番組の再編成なのか、12月の中京に設けてあった金鯱賞が、大阪杯のトライアルとして今年からこの時期とスリットしてきた。これで最速の連覇がかかるヤマカツエースとなった訳である。 レースは外からロードヴァンドールが内へ切れ込んできて、最初のカーブで巧く内ラチまで入りこみ、後はマイペースに落とす流れ。1000m通過が1.00.4と、緩やかな流れを造る。この流れに、各馬が淡々と4角まで何事もなく進む。

4角を廻って直線入口、逃げるロードヴァンドールの後ろに白い帽子の2頭、ルージュバックが最内、その外にプロディガルサンが、隙があらばとの手応えで待っている。
中京競馬場の直線は415mで、東京競馬場に次いでの長さである。そしてラスト1ハロンからは登り坂まである。ここからが苦しいところだ。
その1ハロンを過ぎても、まだ先頭はロードヴァンドール。その後ろに白い帽子の2頭も続いている。その後ろから忍び寄るナスノセイカン。昇り馬の勢いでもあろう。だが外から赤い帽子、ヤマカツエースが満を持しての追い出しとなる。

馬場の4分目あたりか、池添Jの叱咤激励に応える形で伸び始めるヤマカツーエース。ステッキを入れる気がまったくない鞍上の動き。
それに呼応し、真っすぐと伸びてゆくヤマカツエース。有馬記念の最後の脚と同じ様に、勢いがいい。少し後ろからスズカデヴィアスが伸びて来るが、追い越す様な勢いではない。さらに外からステファノスも来ているが、唸るほどの脚色ではない。
かくして、ヤマカツエースが1馬身と少しの差で、金鯱賞連覇。4歳馬のロードヴァンドールが逃げ粘っての2着。復調なったスズカデヴィアスが3着と、少し人気薄馬が2、3着であった。

今日の馬体は、516キロと過去最高の数字。こう言っては失礼かも知れないが、ずっと使ってきてなお馬体が増えていく様に、丈夫な馬であろう。過去、G1は3歳時のNHKマイル。そして昨年の宝塚記念、天皇賞、あの有馬記念では出走メンバーの中で最速の脚を使って前に迫っていくのを目の当たりにして、力をつけているのを観ていた。

今日で7勝目のヤマカツエース。ますますパワーアップと切れに磨きがかかりだしてきている。次なる大阪杯では、もっともうるさい馬になるのかも知れない。そんな金鯱賞でありました…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。