【振り返れば馬券になる!】期待の若手ジョッキーがそのバネを絶賛した素質馬とは!?

先週のオジュウチョウサン南武特別に続き、またも珍しい光景を目撃した。

東京12R終了後、東京競馬場検量室ではジョッキーたちが京都12Rをモニター観戦していた。日曜の京都競馬は1Rからそれまでに外国人11連勝中であることはジョッキーのほとんどが知っており、直線で逃げたモレイラ騎手騎乗のバレーロを藤岡佑介騎手騎乗のサヴィが捕まえに行った際には、「佑介!佑介!」とジョッキーたちの大合唱が始まった。結果は藤岡騎手が1着。全レース外国人ジョッキー制覇を寸前で止めた。

腕達者な外国人ジョッキーが多数来日する時代。日本人ジョッキーの置かれた立場は年々厳しくなってきている。ジョッキーたちの熱を普段近くで感じている身としては、日本人ジョッキーがこれからよりレベルの高いパフォーマンスを見せてくれると信じている。若手は外国人の騎乗ぶりを間近に見れることをチャンスと捉え、飛躍の糧にしてもらいたい。

若手の中でも特に可能性を感じさせてくれるのが石川裕紀人騎手だ。落馬によるケガで長く休養していた時期もあるが、復帰後パワフルなフォームで勝ち星を積み重ねている。ナイスガイでもあり、レース後のコメントも分かりやすく、聞き取りやすい声で丁寧に話してくれることから、マスコミ人気も高い。そんな彼が日曜の東京11R・オーロCで騎乗したのはテトラドラクマ(牝3、美浦・小西厩舎)。今年のクイーンCを好時計で快勝した素質馬だ。

今回は半年の休養を挟んでの実戦。さすがに休み明けが影響したか6着に敗れたものの、石川騎手の表情は暗くなく、「初めて乗りましたが、凄くバネのあるいい馬ですよ!」と興奮気味。「やはり休養明けの分、少し重く感じましたね。成長分はありましたが、それにしてもまだ重かったです。抜け出す時のキレがもう一歩でした。本来ならもっとキレそうな馬です」とテトラドラクマに確かな可能性を感じたよう。プラス18キロだっただけに、叩いた次は変わってきそうだ。

もちろんベテランもまだまだ元気。その代表格が内田博幸騎手。48歳となったが、ポパイのような筋肉をまとった強靭な身体で力強く馬を動かし続けている。ファンを特に大事にすることで知られており、日曜もオーロCをロワアブソリューで制した後、ウィナーズサークルで熱心にファンサービスを行い、検量室前に戻ってきたのは東京12Rの出走馬たちが地下馬道を移動し始めた頃だった。

そんな彼が素質を評価するのが、日曜の東京3R・2歳未勝利に出走したグリグリ(牝2、美浦・奥村武厩舎)。新馬戦で2着になっている顔のかわいい好素質馬だが、2戦目となった今回はスタートからまるで進まず、ラストもジリジリ。5着に敗れてしまった。検量室に戻ってきた内田騎手もこの走りには首をかしげる。「動かなかったね…何でだろう。ゲートも出ないし、進んでいかなかったね。馬がボーっとしていた。気持ちの問題かな…」と敗因を考える。

実際気持ちの問題では…と思うシーンはあった。検量室前にグリグリが戻ってきた際、一度地下馬道で止まってしまい、内田騎手がお尻をポンポンと軽く叩いてようやく前に進む、という光景があったのだ。新馬戦も検量室前で取材しているが、その時は全てにおいてスムーズに動いていた。今日は走りたくない気分だったのか、それはグリグリに聞いてみないと分からないが、「馬も生き物だからね。仕方ない」という言葉が全て。その素質は百戦錬磨の名ジョッキーも高く評価しているだけに、次走以降の巻き返しが期待される。

余談だが、東京12R終了後、帰途につく内田騎手と話になり、別れ際に「東京11Rのロワアブソリューの差し切り、しびれました!」と声をかけたところ、「あれは馬が頑張ってくれたからだよ!」と恥ずかしそうに笑いながら調整ルームへ戻っていった。馬の気持ちを常に第一に考え、馬を愛し、常に馬を立てる、内田騎手らしいシーンであった。

レース後、ジョッキーたちから発されるコメントは様々である。
「うまくいった」
「調子が良かった」
「馬が強かった」
etc…

もちろんこれらのコメントも非常に重要ではあるのだが、よりオイシイのは、負けたジョッキーのコメントだろう。検量室に引き上げてくるジョッキーの表情はそれぞれ違う。悔しそうな表情を浮かべて戻ってくるジョッキーも多い。道中の不利、自身のミス、理由は様々だが、彼らのコメントこそ、次に繋がる。このコーナーでは現場にいたからこそ知りえる敗因、そしてジョッキーの表情などを取り上げながら、次走以降妙味のある馬を挙げていきたい。