【阪神スプリングJ】ついに激突!打倒オジュウチョウサン最有力候補はガチで強い

ハードル界の新王者シングンマイケル

ハードル界の新王者シングンマイケル


障害へ転向して3戦目で初勝利。その後も大崩れなくキャリアを重ね、昨年6月の東京ジャンプステークス(J・G3)で重賞ウイナーの仲間入りを果たすと、10月にJ・G2の東京ハイジャンプ、そして、暮れの中山大障害を制して文字通り、ホップ・ステップ・ジャンプでG1タイトルを手に入れたシングンマイケル。迎える今年初戦・阪神スプリングジャンプでは絶対王者・オジュウチョウサンとの初対決。ここまでの成長、そして王者へ挑む心境を金子光希騎手に聞いた。

一戦ごとに成長 重賞3連勝で悲願のG1制覇!

-:シングンマイケル(セ6、美浦・大江原厩舎)と出会って2年。初めて騎乗された時から、障害馬としての素質を感じられたのでしょうか?

金子光希騎手:ありましたね。障害に向かっていく姿勢、そしてバランス。飛越。僕が乗ってきた馬の中では"理想形"だという感触がありました。トータルで優れたものを感じました。

-:障害馬に一番必要な要素とは何なのでしょう。

金:障害に対して耐えられるフィジカル、そしてメンタル、飛越ですね。跳び過ぎればロスになりますし、跳ばな過ぎるとリスクとなります。障害は非常に難しいレースで、馬も恐怖心もあるでしょうから、障害に対する素直さ、そして斤量と距離をこなすタフさ、心の強さが大事だと思います。

-:障害転向3戦目で初勝利を挙げられました。金子騎手としては予定通りだったのでしょうか。

金:予定通りでした。スタッフの方にも、高市先生にも「3戦以内に結果を出したい」と公言していましたが、平場と違ってペース、斤量が違い、飛越をするなど、今までしてこなかったことを1つ1つ教えて、学んでいかないといけないので、ステップアップしながら、3戦大事に馬を作っていった感じですね。

-:教えに応えられるシングンマイケルは学習能力が高い馬ということなのでしょうか。

金:高いですね。逆に最近自信をつけてみなぎっているというか、唸っていくところもあります。平地のように1ハロン11~12秒台で走るわけではなく、13秒台で走るわけですから、その中で障害を飛ぶことを考えると非常にリズムが大事になります。障害は思った以上に高いですから、こなさないといけない課題、ノルマが多いのです。飛ばない馬もいますし、飛越が低ければいいわけでもありません。マイケルは前向きな馬で、どれだけなだめられるかが当初の課題でした。

シングンマイケル

-:シングンマイケルは休養から帰ってくるたびに、走るたびに強くなっている気配を感じます。

金:リフレッシュされているのは大きいですね。普通であれば太って帰ってきて、そこから絞っていくイメージが強いものですが、シングンマイケルは乗り込みつつ、食べて体がフックラしてくるタイプなんです。いい意味でいい肉付きになっていくんです。追い切りに乗るたびに大きくなっていくんですよ。450kgくらいしかない馬なのに、実際馬が大きくなっていくんです。中身が充実していくのでしょうね。今まで乗った馬でも特殊と言いますか、秀でたものがあるのでしょう。トモなどがどんどん丸くなっていきますから。馬は人間の常識を超えてきますね。本当に馬は奥が深いです。夢のある血統ですし、言葉では表せられないものがありますね。

-:昨年の東京ジャンプSで、主戦を務められていたシンキングダンサーとレースが被り、金子騎手はシンキングダンサーを選ばれました。悩まれたのではないですか?

金:あの時が一番悩みました。苦渋の決断でした。ダンサーも2018年は苦しい年で、付きっ切りで一緒にやってきた馬です。それが昨年春のグランドジャンプではオジュウチョウサンをおびやかすようないい競馬をしてくれました。嬉しい悲鳴ですし、乗り役はこのような悩みを持つべきなのでしょうが、とにかく悩みました。

-:乗り替わりが多い時代だけに、より悩まれると思います。

金:シンキングダンサーを管理する武市先生、そしてシングンマイケルを管理する高市先生の両方と、「年末までどちらに乗っていくか」という話になりました。「ギリギリまで悩んでいいから」と言っていただけて、この世の中、僕を信じてこうして選ばせていただける贅沢で、騎手冥利に尽きる悩みでした。競馬はリスクを伴いますし、命を懸けるものですから、これだけ信頼していただけるのはありがたいことです。苦しい悩みでしたが、ジョッキーをやっていて良かったです。障害をやっていて良かったです。

マイケルを選んだ後もダンサーの調教には乗せていただいていたんです。「こうすればいつでも戻せるしね」と暖かい言葉もいただけていて、僕は恵まれているなと思いました。

いよいよオジュウチョウサンと初対決!

-:東京ジャンプSを石神さんで勝ったマイケルは、その後再び金子騎手とコンビを組み、東京ハイジャンプも勝たれます。迎えた昨年の中山大障害、初めて大障害コースに挑むにあたり、考えていた課題はありましたか?

金:そうですね、斤量、距離は未経験ですから、どううまくエスコートできるか、言ってしまえば課題は僕でした。馬に対する課題はあまりなかったです。めまぐるしく力をつけているのは分かっていましたし、信じていましたから、楽しみのほうが大きかったですよ。課題は自分だけでした(笑)。僕が大障害を勝てるのかと。

-:中山大障害、レースはイメージ通りだったのでしょうか。

金:イメージ通りでしたね。ゲートを出ていつもより外にモタれてみたりはしましたが、うまくエスコートできたと自分でも思います。ペースが速くなると分かっている中でみんなが前についていって、マイケルもハミを噛んだんです。ただ水濠障害を越えたあたりですっとハミが抜けてくれて、これまで教えてきたこと、経験がモノをいった感がありますね。そういう意味では今まで培ってきた経験が結びついたと思います。

-:見事G1ジョッキーになられたわけですが…

金:相変わらずむず痒いですね、呼ばれ慣れてないので(笑)

-:勝った瞬間、思い浮かんだのは何だったのでしょう?

金:それが何もなかったです。真っ白でした。ほっとしたという気持ちも強かったですね。こみあげることも多過ぎましたし、やりきった感慨深さもありましたし、長かったという気持ちもありました。感無量でした。他の障害未勝利や、障害オープンと勝利という意味では同じですが、重みは違いましたね。目指していたところにたどり着けました。

-:表彰式では涙を流されていました。

金:僕もこれまで悔し涙は流してきましたが、ああいうこみあげてくる涙はなかなか流せませんからね。ジョッキーになって20年、短くはなかったですよね。長かったです。よくここまでやってこられたなと。

シングンマイケル

▲表彰式で涙を流す金子騎手と、先日他界された高市調教師(左)

-:お子さんの目の前での勝利でもありました。

金:たまに妻が連れてくるのですが、前回の東京ハイジャンプも競馬場には来ていたものの、口取り写真には参加しなかったんです。伊坂オーナーや高市先生にも紹介し、「中山大障害ではぜひ口取りに参加させてください」と約束もあったんです。いい記念になりました。こういうのを幸せと言うのでしょうね。

-:この春、またオジュウチョウサンとぶつかることになりますね。オジュウの強さは我々より、一緒に乗っている金子さんのほうが知られていると思います。

金:稀代の名馬ですからね。マイケルもG1馬という箔がついて、障害の年度代表馬というタイトルをいただいて、ようやく挑戦権を得たと思っています。胸を借りるつもりで頑張りたいですね。オジュウはブランクがありますが、規格外ですから。貫禄もあります。負かすのはマイケルであってほしい、そんな願い、希望はあります。

-:マイケルもまだまだ成長する余地があるのでしょうか?

金:ここから先は記録を作っていくというか、どこまでの馬になるか未知数なところがありますし、僕の推測でくくってはいけないと思っています。楽しみです。

-:今年の金子さんご自身の目標を教えてください。

金:オジュウへ堂々と挑戦できると思っていますし、また来年もシングンマイケルが障害年度代表馬として招待される、それが目標です。個人的な贅沢な希望でしたら、障害最多勝ジョッキーとしてJRA賞授賞式に行きたいですね。森くん(森一馬騎手)が「年間20勝する」と言っていますから大変でしょうが(笑)、1つ1つ、いい結果を出していくのが目標です。

-:最後に、ファンの皆様へメッセージをお願いいたします。

金:リスクもありますが、障害は夢があるレースです。1つ1つの山を超え、谷を超え、もちろん危険もありますが、そのスリルも楽しんでいただければと思います。応援よろしくお願いいたします。

シングンマイケル

▲障害リーディングを目指す金子騎手