騎手としての行き先を見極める

-:オーストラリアでデビューをして5年が経ちましたが、オーストラリアのジョッキーのレベルについてはどう感じていますか?

市:レベルはすごい高いと思います。特にシドニーは競争がすごく激しくて、リーディングトレーナーの元で競馬に乗らないと、上位には食い込めないです。しかも、ちょっとしたミスがあると頻繁に乗り替わりになります。

-:ご自身的にオーストラリアでデビュー出来たことはどうお考えですか?

市:う~ん、それは今、ハッキリと分からないですね。そういう意味で、近いうち日本で乗って、(自分が)どれくらいのものなのか、と見極めたいというのもあります。

-:それは、自分の騎手としての行き先を見極めると。

市:そうですね。行き先プラス、今までやってきたことが間違ってなかったか、ということを……。

-:オーストラリアで骨を埋めよう、というわけではないのですね。

市:というのも、オーストラリアでしか競馬に乗っていないので、簡単にパッとは決められないですし、日本で乗りたいという思いがあるので、「オーストラリアをベースに」とはまだ言えないですね。それに、競馬自体が好きなので、別に騎手として以外にもやれることがあるなら。それはまだやってみないと分からない部分もありますね。

市川雄介

日本馬のサポートを行った市川騎手
左はワールドエースのホール騎手、右は池江泰寿調教師


-:今回、日本から馬が4頭来て、通訳から色々とサポートされていますが、それは騎手という仕事を中断してやられている訳です。一方でそれはそれで自分の中でも楽しい仕事でもある訳ですね。

市:楽しく、良い経験ですし、堀(宣行)先生や池江(泰寿)先生、厩舎スタッフ、ノーザンファームの関係者、獣医の先生などはシドニーに居ると、なかなかお会いする機会もないですし、良い刺激にもなるので、競馬の仕事をやっている上ではすごく良い経験にはなっていると思います。なかなか話せない人と会話して、JRAの方とも深い話を出来るということは大きなことですね。

-:具体的にどういう仕事の手伝いをされているのですか?

市:ほぼ毎日厩舎に行って、通訳をはじめ、調教タイムをとったり、馬場を開放する時に手伝ったり、僅かではありますが馬にも触りました。レースに行っても装鞍を手伝ったり、競馬に行っての下準備もやっていました。

-:前哨戦とかもご覧になったと思いますが、自分が乗ってみたいとは思いませんか?

市:いやいや、それはまた別の話になってくるので。乗りたいとはそれは思いますが、今は携われるだけでもありがたいですね。

韓国、香港、シンガポール…… ニューマーケットにも

-:インタビューも終盤に差し掛かってきましたが、オーストラリア競馬のここが面白いぞ、というPRも教えてください。

市:毎日競馬がありますし、競馬場のカテゴリーも全然違いますしね。日本の競馬とはまた全然違うノンビリ感がありますね。それでいてスポーツ感があって、ギャンブル一辺倒でない競馬の良いところが出ているのではないかなと思います。のどかでピクニック気分で競馬場に来たりする、また日本とは違う感じです。逆に、馬券が売れるということは重要ですし、それが日本の良いところですけどね。

-:今後の話になりますが、日本の地方競馬で乗るプランは、話がまとまれば今年中にも実現しそうですか?

市:話が上手くまとまれば、今年の出来れば早い内に。

-:その後は1回オーストラリアに戻って。

市:ノーザンファームさんや栗東や美浦にも研修で行ってみたいので。地方で3カ月乗り終わった後は、1カ月くらい日本にいて競馬の研修をさせてもらったり、あと韓国にも行ってみても良いかな、とは候補として考えています。

-:韓国以外でどこか興味のある国はありますか?

市:もちろん香港、シンガポールは行ってみたいですが、簡単に行けるところではないので。イギリスには友達が行っているので、競馬に乗れればベストですが、ニューマーケットの調教場などは行って見てみたいというのはありますね。


「JRAが一番の理想ですが、その辺はやりながら探っていきます。今、JRAの試験も受けようかと思っているので、探り探りその辺も」


-:将来的にはJRAで乗れるようになりたいと。

市:最初はそうだったのですが、やっていく内に……。

-:こういう世界も良いと。

市:まあ~、そうですね。お金の面で言ってしまえば、JRAが一番の理想ですが、その辺はやりながら探っていきます。今、JRAの試験も受けようかと思っているので、探り探りその辺も。勉強もしないといけないですしね。

-:目標としている騎手はいますか?

市:クリストフ・スミヨンです。

-:同業者から見ても、やはり上手いジョッキーですか?

市:やはり全然違いますね。レベルが違います。ジョアン・モレイラも上手いですよね。ジョーは最近出て来たのですが、クリストフ・スミヨンは僕の中では競馬を始めた頃からのスーパースターなので。

-:ライアン・ムーア騎手はどうでしょう?

市:ムーアもすごく上手ですし、人柄も素晴らしいでしょうし、世界中どこでも乗っていますが、僕の中ではスミヨンの方がスター性といいますか、そういうところ魅かれますね。

良い意味での苦悩の日々

-:スミヨン騎手が理想ですが、将来こうなりたいという理想像はありますか?

市:逆に理想像が昔より見えなくなりました。

-:昔の方が夢がありましたか?

市:まだ下乗りで“結果を残すジョッキーになるんだ!”という時の方が、目標がハッキリ見えていたというのはありますね。今は「よく分からない」という言い方は語弊がありますが、クリアな目標がなくて、曖昧になってきています……。悪い意味ではなくて、“良い意味で”ですけどね。

-:他に騎手として以外にもやりたいことが出て来たと。

市:興味が色々と湧いてきたというのもありますし、何か良い意味で悩んでいますけどね。

-:騎手をやっていて、どういう時が一番嬉しいですか?

市:勝った時は嬉しいですが、自分でずっと乗ってきていて期待していた馬が、勝って結果を残せた時はやっぱり嬉しいですね。そして、いつもお世話になっている人の馬で勝てた時の方が喜びは大きいですね。急にパッと頼まれた時より、ずっとサポートしてくれている人の馬で結果が残せた時の方が、喜びは全然違いますね。

-:これからドンドン夢が広がっていく感じですね。日本の競馬ファンにメッセージをお願いします。

市:いつかJRAで騎乗して、自分の技術を発揮出来る機会があれば良いなと思います。もう少し制度が変わってチャンスが増えれば良いのですが。「海外にも日本人で上手な人がいるんだぞ」といつかアピールしたいです。なかなか難しいので、地道に一つ一つやっていきます。

(取材・写真=競馬ラボ特派員)

市川雄介騎手インタビュー(前半)はコチラ⇒

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