キセキが菊花賞馬の意地を見せる。道悪の3000mを激走した菊花賞後の香港遠征は反動が出て9着に大敗。前走の日経賞は折り合いを欠いた。天皇賞(春)をパスして、陣営が「2000~2400あたりがベスト」という宝塚記念に照準を絞ってきた。秋には凱旋門賞への出走プランもあるキセキの復活に懸ける思いを、担当の清山宏明調教助手に聞いた。

香港での大敗は「見えない心肺機能のダメージ」

-:宝塚記念(G1)に挑むキセキ(牡4、栗東・角居厩舎)について、よろしくお願いします。菊花賞でG1馬になった後からの経緯をお話ししていただきたいのですが、約1カ月半後に香港ヴァーズ(G1)へ挑まれましたね。

清山宏明調教助手:そうですね。いま思えば、菊花賞がああいう極悪馬場で、なおかつ3000mを激走。1カ月弱で初遠征の香港で、気候もすごく暖かかったので、体調は上がってきているように思ったのですが、目に見えない心肺機能のダメージなどが影響したと思いますね。結果は流れも向かなかったこともありますけど、ああいう経験を踏まえて、大人の階段をしっかり登ってきてくれていると思うので。

香港の遠征が終わって、リフレッシュ期間を取って、春の天皇賞を目標とする上で、前哨戦の日経賞をどういう形でレースをしてくれるかがテーマでもあったのですが、ファンの期待と僕らの思いが違う形になってしまったのですがね。その後、リフレッシュをして、大人の体といいますか、立派でボリューミーな感じで帰ってきてくれたので。先週と今週はミルコ(デムーロ)に乗ってもらったのですが「すごく立派になった。菊花賞の時のような体重でなくても大丈夫だよ。今のままで順調に乗って行ってくれたら良いよ」という話だったので、こちらも安心できますしね。

清山助手

▲近2戦の敗戦から巻き返しを誓う担当の清山助手

-:香港の時も日経賞の時もそうだったのですが、道中は完全に折り合えないところがありましたね。

清:そうですね。そういう気性の激しさといいますか、真面目過ぎるところが表に出る部分があるので。今回は馬場で乗りながら、精神的なコントロールを落ち着いた状況で対応できることをテーマにしながら、普段の調教はやっています。またレースになると違うところもあるみたいですが、今のところは順調に来られているのかなと思います。

-:ハミなど馬装の変更はないですか?

清:今のところはナチュラルな状態で行こうかと思っているのですが、やっぱりレースに向けてだいぶ気持ちも入ってきたので。気持ちが入ってくるということは、そういう激しい部分が見え隠れしたきたといいますか、今まで見せていなかった部分を見せてくる可能性があるとは思うので、レース前にそういう準備は頭の片隅には置きながら、レースを落ち着いた状態で出来れば、キセキの能力をちゃんと発揮できるかと思います。

-:特に日経賞では、途中で我慢しきれなかったですからね。

清:そういうところも踏まえて、無駄に体力を消耗しないように、ですね。もともと賢い子で、レースの闘争本能が非常に激しく出るので、そこが自分で自分を殺しているような競馬になっちゃいますからね。

-:息が持つところまで我慢して、そこからスパートできるのが理想だと思うのですが、そこまで上手く運べるか、ですね。菊花賞では極悪馬場で、上がりが39.6秒くらい掛かっていたのですが、香港では一転して晴れの良馬場で、条件も全く違いましたよね。

清:菊花賞のああいう馬場をクリアできたということは、僕らからすると信じられないところが大きかったのですが、元来が良馬場で、上がりの速いところでしっかり対応できることを見せていた馬ですからね。ただ、香港の場合は色々な要素があったと思いますし、一概に菊花賞の後で馬場が良かったから対応できなかった、ということではないと思うので。本来、キセキは良馬場の方が絶対走れると思っていますから。香港は過程を考えれば、本当に良い経験をさせてもらったのかなと思います。

-:香港ヴァーズと日経賞はファンの期待通りとはいかなかったのですが、宝塚記念はそこを踏まえて、仕切り直しということですね。

清:香港と日経賞でファンの期待を裏切っていると感じていますし、僕らも期待が大きいです。相手はG1馬がたくさんいますし、一筋縄ではいかないことが当然なのですが、キセキが良い走りをするサポートをどれだけできるか、僕らが集中すべきポイントだと思うのでね。

キセキ

▲昨年12月、香港シャティン競馬場での撮影(ミルコ・デムーロ騎手が騎乗)

ローテは予定通り「間隔がしっかり取れたことはプラス」

-:勝てるように仕上げることと、レースで折り合いを欠くことは似ていると思うのですが。

清:そうですね。確かにしっかり攻めているから、そういうところが出てくると思いますから。守りも大事ですよ。守る時は守る。攻める時はちゃんと攻めるというバランスが整って、結果として出てくると思うので。

-:今回、臨むに当たって、先ほど「精神面でのバランスを考えている」とおっしゃっていましたけど、その中で肉体面も走れるように持っていくというのはけっこう難しいことですね。

清:キセキだけではなくて、もともと競走馬というのはデリケートな生き物ですよね。個々によった対応の仕方というのはまた違うと思うのですが、レースに向かう上で、同じように扱うにしても繊細に対応しなきゃいけないし、気持ちがブレてはいけないところは繋がってくるとは思うのですがね。今はレースに向けて、どこまで攻めて良いのか、どこまで引いても良いのかと不安に思うと見えなくなってきますから。やることやることを冷静に考え、自信を持って向かって、その落ち着いたところの普段の対応を確認しながら、一歩ずつちゃんと前に攻めていっているというのが現状だと思うので。

-:そういう意味では、1週前の追い切りが終わって、また一歩レースに前進したということですね。

清:そこは、順番をしっかり踏まえながら来られているかなと思いますね。

キセキ

-:天皇賞(春)を使えなかったことで、順調さを欠いたんじゃないかと不安に思っているファンの方もいらっしゃるかもしれませんけど、そこは心配なく良い状態で臨めると考えて良いですか。

清:そうですね。あそこは一つの区切りと言ったらおかしいですけど、先生とオーナーが話されて、天皇賞(春)はスキップされたので。その代わり、日経賞から宝塚記念まで時間の猶予があったので、レースに向けての間隔がある程度しっかり取れたということはプラスに働いたと思うので。

-:3000m自体は勝っているけども、特殊な条件だったじゃないですか?この馬の本質的な距離適性というのを考えると、疲れはあったかもしれないですけど、香港のレースは最後、止まっているように見えたじゃないですか。清山さん自身が乗っていて、どうですか?

清:香港のレースだけを見れば、ですけどね。でも、神戸新聞杯も同じ2400mですし、本来落ち着いた状態で走れれば、2000~2400というあたりがベストかと思うのですが、気持ちのあり方次第だと思いますし、2000にしても、2400にしてもレースで落ち着いて対応できれば問題ないと思いますね。

-:日経賞の時はピンク帽で、折り合いを気にする馬には壁がつくれなかった状況で、1頭だけ外に出ちゃいましたからね。

清:それがゴーサインだと思った部分がやっぱりあるのでね。

-:そう考えると、宝塚記念も外じゃない方が良いというのはありますか?

清:枠順はどこでも良いと思うんですよ。スタートしてから、落ち着いた状態で、レースの流れにスムーズに乗っていければポジションは関係ないと思いますし、そこは乗り手のミルコと会話しながら、落ち着いた状態で走れれば枠順は関係ないのかなと。

父ルーラーシップも角居厩舎「夢のある形」
キセキ陣営インタビュー(2P)はコチラ⇒