秋緒戦の神戸新聞杯を快勝し、古馬撃破へ挑んだ天皇賞(秋)がまさかの6着に敗れたサートゥルナーリア。初の古馬との対戦、これまでに経験したことがないハイペースなど、様々な敗因が挙げられる中、グランプリに狙いを定め、鞍上もスミヨン騎手とのコンビ継続が決定。さらに舞台はG1で2戦2勝の中山と反撃に向け、申し分ない条件が揃った。「明らかに今の方が良い」というデキで臨むグランプリ。中間の変化、その手応えを陣営に聞いた。

●12月18日(水)の最終追い切り以降、小滝崇調教助手のコメント
「日曜(15日)に続いて全体時計を詰めた上で、ラスト2Fでしっかり伸ばす調教を行いました。予定通りの内容をこなすことができたと思います。

1週前には追いつく範囲内で前に馬を置く形で、目標にする形で着差を詰めて、最後の直線で交わすような追い切りを行ったのですが、実は天皇賞の前にもそういう調教を意図していたところ、地下馬道が渋滞したことで、先導役の馬がだいぶ先に馬場に出ざるをえなかったんですよね。だから、一般的な併せ馬とも言い難いですが、この秋以降、初めて併せ馬をやることになりました。

もともと併せ馬をやらなくなった理由としては、一つは併せられる相手がもういなかったこと。他はテンションを配慮してという点もあると思いますね。ただ、先週も語らせてもらったように、1週前の追い切りはスミヨン騎手に任せた部分もありますが、レースへ向けて、いいイメージができる内容だったと思います。天皇賞で乗ってもらったことを踏まえての追い切りでしたし、今週も無事に追い切りを終えられて、いい状態でレースに迎えそうです」

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仕上がりは天皇賞よりも圧倒的に上

-:有馬記念(G1)サートゥルナーリア(牡3、栗東・角居厩舎)についてお伺いします。神戸新聞杯を1回使って、すごい内容でした。ここからどこまで行くんだろうというムードで向かった天皇賞(秋)でしたが、正直なところファンの期待ほど走れなかった印象がありました。小滝さんからご覧になっていかがでしたか。

小滝崇調教助手:レース自体は6着ですが、もう少しやれるかなと思っていました。僕としてもちょっと残念な結果になってしまいました。

-:敗因をあげるとするならば、高速決着やハイペースなどいろんな分析ができると思います。小滝さんはどう見ていますか。

小:一線級の馬が集まる中で若干出負けし、そこでポジションを取りに行って馬のテンションが上がり、掛かってしまいました。もちろん、勝ち馬のアーモンドアイや2~5着の馬との能力の比較で6着だったのかなと思います。調整過程から見ていけば、神戸新聞杯から1週間経って帰ってきたわけですが、神戸新聞杯での競馬自体はそんなに苦しい内容ではありませんでした。思いのほかサートゥルナーリアはダメージが残りやすいタイプなのかもしれないですね。

サートゥルナーリア

▲天皇賞(秋)はまさかの6着(右)

-:毎回キッチリ走るので、その後が…ということですね。

小:そうですね。春もしかりで、皐月賞は良かったけど、中2週間で帰ってきて臨んだダービーがあまり良くなくて。夏の休養を挟んでの神戸新聞杯のパフォーマンスと、天皇賞(秋)のパフォーマンスを比較すると、やっぱり間を空けた方が良いのかなと。これまでの結果を見て、最近はそう思い始めてきていますね。

-:神戸新聞杯から天皇賞(秋)は、春よりは調教ペースを若干落として負荷があまり掛からないようにすることで、レースの結果に結び付けようとするテーマがあったと思います。今回は有馬記念に向けて、どんな感じで調整されていますか。

小:引き続き馬が能力を出しやすい状態をつくっていってあげるぐらいのテンションで進めています。こちらとしては何が何でも詰め込む調教内容にはしていません。

-:先週の2週前追い切りには中谷雄太騎手が乗って、CWコース1周を単走で追い切りをされていました。その動きはいかがでしたか。

小:帰厩後1回目のCW追い切りでした。予定通り短期放牧から帰ってきて、思っていた状態で、良い追い切りが出来たなと思っています。

-:3~4コーナーからスッと動いていく時の加速がスムーズで、今回は良いなという感じでしたね。

小:そうですね。前回は1週前に乗ってもらったのが西村淳也騎手でしたが、その時と比べても今回のほうが上の段階なのかなと思って、ホッとしましたね。

-:今週は昨日(12/11)、CWコースでの併せ馬にスミヨン騎手が乗って追われた訳ですが、どんな動きでしたか。

小:結果、3ハロンぐらいから併せ馬になったんですけど、前の馬を見せながら行って、付いていってくださいという指示でした。もっと内をサッと流していくかなと思ったら「ジワッと、ある程度我慢も利いたし、ユッタリしていた」とのこと。直線に入ってからは良い動きでしたし、前にいた馬もある程度頑張ってくれた。最後はそれを目掛けて並んでゴール出来たので、良い調教が出来たなと思いました。

-:スミヨン騎手と言えば、天皇賞(秋)前に大絶賛して「どんな競馬でも勝てる」というぐらいのコメントをされていました。それだけサートゥルナーリアを信頼している証拠だと思います。今回の追い切り後のスミヨン騎手の評価はいかがでしたか。

小:「今回もすごく良い」と言ってくれまして、「落ち着いているし、折り合いも問題ない」ということでした。以前は直線に向く前から、サッと仕掛けたら、一気にバスッと抜け出たじゃないですか。それをある程度意識してなのか、前の馬を意識しながら、ちょっとずつ小出しにして、ジリジリ追い掛けて、最後グッと捕まえるようなイメージで乗ってくれましたね。1回競馬で乗ってもらっているので、色々レースに向けてのイメージをしながら乗ってくれたのかなと思いますし、引き続き良いイメージを持ってくれたのかなと。

サートゥルナーリア

▲スミヨン騎手を背にした1週前追い切り

-:3歳の秋~冬にレースに繋がる走り方を、スミヨン騎手から教わったという調教だったのですね。

小:そうですね。それを意識してくれたのかなと思っています。

-:今回の舞台は中山競馬場の2500mです。以前お話を聞かせていただいた時は「距離適性はどこがベストなのか、まだ掴み切れていない」ということでした。現時点では、中山2500というのはサートゥルナーリアにとってプラスでしょうか。

小:距離は許容範囲だと思っています。東京の2400と中山の2500だったら、春先から「中山の有馬記念を走っているイメージがあるよね」といったことを担当の滝川さんや厩舎サイドのスタッフ間ではよく話していました。脚質的にも合うんじゃないかと思っています。

-:あとは、どれぐらい上積みを持って迎えられるかという点が、ファンの気になっている所だと思います。言葉で言うのは難しいと思いますが、天皇賞(秋)からどれぐらい上積みがあると思われますか。

小:単純に天皇賞(秋)と今を比べたとしたら、圧倒的に今回の方が良いと思います。

-:3歳馬と古馬の能力差がどれぐらいあるのか、未知な部分があるのですが、手応えとしては悪くないですか。

小:そうですね。馬の雰囲気としてはフレッシュだった神戸新聞杯に近いので、あれぐらいのパフォーマンスは出せる状態にはあると思っています。

-:あとは、輸送をして競馬場に着いてからのテンションが上がり過ぎないで欲しいという所ですか。

小:そうですね。でも、競馬の返し馬で放す所までは、いつも何とか落ち着いてくれているので、担当の滝川さんも「ゲート裏のテンションを上げ過ぎないように色々工夫する」と言っています。

-:それはどういう対策ですか。

小:過去のレースを振り返って見ると、ポケットに入って狭い所でグルグル回ることが、もしかしたら苦手なのかも?というのがあります。中山だとゲートのある場所とポケットがすぐ目の前なので、普通はポケットの中に入って待機するんですけど、今回は他の馬と離れたゲート裏で待機しようかなと思っています。

トップホースにしかない高級感

-:馬装に関してはいかがですか。

小:引き続きメンコは着けて行く予定です。幸いスタンドの正面スタートではないので、それは良いことだと思いますけどね。

-:今回は、スタートが向正面の奥からなんですけど、1周目の4コーナーからスタンド前が大歓声になりそうじゃないですか。そこでの難しさはありそうなタイプですか。

小:普段はそんなイメージはないですけどね。出して行けばその気になるかもしれませんけど、2500を走る訳ですから、天皇賞(秋)は「少し折り合いを欠いた」というコメントがあったので、そこら辺はスミヨンさんが奮起してくれるんじゃないかと思っています。折り合いを意識しながら乗ってくれるんじゃないかと思っています。

-:天皇賞(秋)の勝ち馬であるアーモンドアイや相当強い馬が集まるので、その中でどれぐらいやれるかというのも、ファンは楽しみです。サートゥルナーリアに調教で乗っている小滝さんにはプレッシャーがかかりそうですね。

小:そうですね。馬は変わらず元気ですし体調も良いので、そこに向かって日々淡々と……それだけですね。

-:馬の体に関してなのですが、天皇賞(秋)の時よりもフックラして見えますね。

小:そうですね。昨日追い切って、今日もゲートを見せに行くついでに少し跨ったんですが、まさにその通りでした。レースの1週前ぐらいになると体を膨らませてくるんです。多分毎回言っていると思うんですけどね。「今朝も大きくなっていますね」と滝川さんとも話していたところです。先ほど体重を量ったら504キロでしたから、前走と同じような推移で来ています。やっぱり充実していると体の張りが違いますよね。

-:見た目にも今回の方が良いなというのが伝わってきますね。

サートゥルナーリア

▲サートゥルナーリアと小滝助手

小:そうですね。明らかに今回の方が良いと思います。

-:あと1週間、どういうふうに過ごされますか。

小:まずは毎日の調教を淡々と。特に変わったことをする訳でもなく、来週の追い切りは坂路で行こうと決めてあるので、週末はどうしようかなと考えているぐらいです。坂路でやるにしても、ある程度はシッカリ時計を出して行こうかなと思っています。

-:ちなみに、この馬の乗り心地というのはどんな感じなのですか。

小:パワーと前に真っ直ぐ伸びる安定感があって、それでいて硬い訳でもないです。本当にパワーもあって、スピードもあって、安定感もあって、一味も二味も違う馬だと思います。

-:トップホースにしかない高級感を持っている馬なのですね。

小:そうですね。しばらく乗せてもらっていますけど、やっぱりこんな馬はなかなかいないなと、今も思っています。

-:この血統の中では乗りやすい方ですか。

小:聞いている限りでは、そうだと思います。僕はエピファネイアとかリオンディーズには乗っていなかったので、正確な比較はできませんが。

-:今回スミヨン騎手は2回目で、どのようにコントロールして、手の内に収めてくれるか楽しみですね。

小:そうですね。楽しみです。今は本当に自信を持って出走させられる状態にあると思うので、その中でどこまでやれるか?と思っています。

-:ペースに結構敏感だと評判のある馬です。スローでヨーイドンの方が、この馬には合うのか、それとも前回みたいな流れるレースでも、状態さえ整えば好勝負出来るのか、どう判断されますか。

小:中山の皐月賞だけがそこそこ速かったんでしょうけど、速いペース自体がダメだとは思いません。以前は左回りも合うというコメントを出させてもらっていたんですけど、それは得意な右手前で最後の直線を迎えられるという意味合いで感じていて、もしかしたらコーナーで得意な右手前で上手く脚を溜めることで、最後の直線で弾けられるのかなというのも最近感じています。得意な右手前でコーナーを曲がりながら、上手く脚を溜めていけばペースにも対応出来ると思っています。

-:ペースよりも右回りが得意なのかもしれないということですね。

小:そうですね。左手前の競馬は2回しか走っていないんですけど、どのレースも速かったので何とも言えないですけどね。

サートゥルナーリア
サートゥルナーリア

▲中山コースは2勝がともにG1
反撃に期待がかかる

-:あとは単純に、今回の方が状態が上がっているから、ペースにも対応出来る可能性は出てきていますよね。

小:そのタイミングが毎回右回りだったというだけで、そう思ってます。

-:神戸新聞杯をあれだけ強いパフォーマンスで勝った馬が、2回目の天皇賞(秋)で着順を落としてしまいました。サートゥルナーリアよりも下の着順だったスワーヴリチャードがジャパンCを勝ちましたし、ウインブライトも香港で勝っていますから、それより上だったサートゥルナーリアが有馬記念に勝つということも、十分可能性としてはありますよね。

小:そうですね。いい状態で出走しますからね。

-:応援しているファンに一言だけメッセージをいただけますか。

小:天皇賞(秋)では残念な結果になってしまったんですけど、改めて態勢を整え直して、またもう一度と思える状態で臨めています。今年最後の有馬記念で良い所を見せてくれて、一番になってくれたら良いなと思っていますので、レースでサートゥルナーリアから目を離さずに観てもらえたらなと思います。

-:ありがとうございました。