関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

清水久詞調教師

2歳時より重賞戦線を歩みながらもなかなか結果が出なかったトウケイヘイロー(牡4、栗東・清水久厩舎)。しかし、年が明けて4歳になった本年の戦績は5戦4勝で、その内の3勝は重賞、しかも2000m級に転向した前2走で連勝というから恐れ入る。今回は更なる強敵が集う札幌記念へと乗り込むことになるが、聞けばこの先のローテーションまでがもう組まれている模様。新進気鋭の清水久詞調教師にその展望を伺ってきた。

<関連リンク>

最終追い切り後のコメントはコチラ⇒

2週前追い切り後のコメントはコチラ⇒


中距離路線への転向を振り返って

-:前走の函館記念は「本格化」と明言していいほどの内容だったと思います。札幌記念では強力メンバーの中でも人気に推されるであろうトウケイヘイローについて教えてください。まずは前走を振り返っていただいていかがですか?

清水久詞調教師:状態に関しては何ら変わりなかったですし、鳴尾記念の競馬を見れば、トップハンデでも小回りでしたし、自信はありました。

-:鳴尾記念より重いハンデで、更に厳しいラップで最後まで行きました。その辺の評価についてはどうですか?

清:ラップを見れば決して遅くはなかったんですけれど、あのペースがあの子のペースなんだろうなとは思いますね。元々1400m、1600mとかを使っていましたから。それくらいの距離でも、前で競馬できる行き脚を持っていますのでね。

-:安田記念を目指す過程の京王杯で負けてしまったじゃないですか。そこから距離転換で長めの距離、2000mというのは先生のご発案だったのですか?

清:いえ、オーナーから「一度2000mでどうだ」ということで。

-:確か、その時期は米子Sなどもあったと思うのですけれど、そちらも選択肢に含めていたのですか?

清:一応は見ていました。そういう番組があるというのは。

-:もし安田記念への出走が叶っていたら、どうなっていたでしょうか?

清:今頃はサマーマイルへ行っているでしょうね。わからないですけれどね、こればっかりは。

-:なるほど。



シンザン記念で1番人気の地力

-:函館での調整は栗東と比べてどこか違う点はありますか?

清:いや、特に変わったことは取り入れずに。馬場の形態が少し変わるだけであって、出来るだけ栗東と同じような調整でやっていこうとは思っています。

-:函館は施設が狭いじゃないですか。その辺は、長め長めに乗ろうみたいな?

清:そういうのはありますね。小さければ小さいなりに、大きければ大きいなりに。

-:昨年の夏から数えて、7戦5勝。体も含め、以前との違いはどこに感じていますか?

清:見た目には、去年の夏からガラッと変わった部分は大きく見当たらないんですけれどね。中身に力をつけてきているんでしょうね。

-:昨年の夏から春先まで休養しましたけれど、その時に馬が成長した感じなんですかね。

清:今、考えるとあの休養は良い休養になったのでしょうね。

-:函館記念が終わって一度放牧に出されたのですか?

清:はい。日高のほうに短期で。少し環境を変える意味で。特別に放牧を挟んだという訳ではなくて、次の競馬までの間隔も考えながら。

-:正直、ゴールドヘイローというと、地味な血統じゃないですか。まさかここまで大化けするとは先生は思っていましたか?

清:よく言われますね。でも、すごい成長力ですよね。馬自身が。

-:2歳の頃から重賞を歩んできたじゃないですか。シンザン記念も1番人気になりましたし。化ける下地はあったということですよね。

清:そうですね。デビューが2歳の夏で早い時期だったんですけれど、デビュー前の動きも2歳の早い時期にしてはしっかりしていましたし、乗った感じも力強かったんでね。デビュー前からすごく完成度が高いというイメージはありましたね。

-:ゴールドヘイローの戦歴、種牡馬としての成績からいって、一般のファンだったらダート路線という発想も出てくると思うのですけれど、先生はそういうお考えはありませんでしたか?

清:なかったですね。それも、よく言われるんですけれど、僕はなかったです。新馬勝ちも芝ですし、その後も芝で結果が出ているのでね。それだけ芝で走るものをあえてダートで使うこともないなと思って。



札幌記念後は天皇賞(秋)に直行

-:今日(8/7)の追い切りはどういった指示を出されていたのですか?

清:いつも通りやりたかったので「5F67~69秒くらいまで、70秒は切るような感じで、少し仕掛けて反応だけ確認しといて」ということです。

-:追い切りでは、ジョッキーが乗っていることが多いじゃないですか。やっぱりそれは難しさがあるからなんですか?

清:いえ、そんなに乗り難しい馬ではないんです。馬自身が、普通キャンターと追い日はわかっていますので。

-:今、馬体重はどれくらいですか?

清:大体490キロ前後ですので、そんなに大幅な増減はないと思います。

-:滞在じゃないですか。運動量も栗東よりは減るでしょうし、大幅ということはなしとしても増えたりすることは想定をしていますか?

清:その辺はこの馬に限らず注意していますね。

-:これから残り10日くらいの調整はどういう内容を予定していますか?

清:状態を見ながらですけれど、週末と来週水曜にまた2本できますので。武豊騎手ではありませんが、ジョッキーに乗ってもらう予定です。

7日、黛騎手が騎乗して追い切り(函館W 5F:69.5-54.9-39.9-13.0秒)


-:メンバーが強力になる札幌記念ですけれど、この馬自身の、トウケイヘイローの競馬をするだけだと思います。馬場はどうですか?少し荒れてきています。

清:良馬場であれば特には気にしていないです。

-:今までは開幕週の馬場だったりしたのが、今回は中盤の内側の荒れた馬場になると思いますが。

清:まあ、雨さえ降らなければ。自然に荒れてくるのはしょうがないことなので。

-:やっぱり上滑りする馬場はよくないですか?

清:あんまり雨が降られるとねえ。レコードを出したこともあるような馬なのでね。良馬場でやりたいですね。それは、他にも同じように思う陣営もあると思うんですけど。

-:今回はそうそうたるメンバーで、トーセンジョーダンがいたり、皐月賞馬ロゴタイプがいたり、ホエールキャプチャ、レインボーダリア……。その中では挑戦者という立場だと思います。先生の札幌記念に向けての意気込みを教えてください。

清:いつも言うんですけれど、勝てば勝つほど相手は強くなるので、それは致し方ないことなのでね。相手関係は気にせず、ジョッキーに渡すまでの過程は抜かりのないように。今まで通り、自信の持てる状態でジョッキーにバトンタッチしたいですよね。

-:それが厩舎の仕事という。

清:そうですね。

-:ここ2戦ハナを切れているじゃないですか。札幌記念は当然他の馬のマークも厳しくなると思います。もし番手からの競馬になった場合どうですか、精神面とかは。

清:ここ2走を見ると、前に馬を置かない形になればリラックスして走ってくれているので、仮に番手の競馬になったとしてもそこはジョッキーに任せるだけです。

-:札幌記念を勝てば秋の展望がグッと広がると思います。秋の目標などがあれば、ちょっと気の早い話かもしれないですけれど、考えている部分で教えていただけますか?

清:ここで結果がどうであっても、「無事であれば天皇賞に向かおう」とオーナーとはお話しています。

-:その後はマイルチャンピオンシップなども視野に?もしくはジャパンカップとか。

清:まあ、その後のことはまたオーナーと相談しながら。

-:それでは、最後にファンの方々にメッセージをお願いします。

清:少しずつ、この子のファンもできてくれていると思うのですけれど、いい状態で出走させてあげて、皆さんも函館に足を運んで欲しいですね。

-:トウケイヘイローの逃走劇を見てもらいたいですね。

清:ユタカジョッキーとのコンビでね。

-:そうですね。人馬一体の。

清:もう一度、ウィナーズサークルでファンの皆さんに姿を見せたいのでね、応援よろしくお願いします。

1週前追い切りに騎乗した黛弘人騎手のコメント




追い切りは清水調教師に声をかけてもらって、乗せてもらいました。

トウケイヘイローは、身体が柔らかく、いい背中をしていますね。しっかり身体を使って、パワフルに走りますよ。追い切りでは、どれだけ行きたがったりするのか、反応やコントロールなどを確認しました。そこでわかったのが豊さん(武豊騎手)の凄さ。

函館記念であのペースで馬を気持ちよく走らせてるユタカさんは凄い。トウケイヘイローは“上に人がいないとって思って走っていたのではないでしょうか。

メイショウナルトの小倉記念も震えました。3角からユタカさんが動いていって、あの判断と、それに応える馬。本当にビックリでしたよ。

攻め馬でのものですが、自分とユタカさんの感性の比較をしてみました。逃げるという競馬はリズムですからね。僕がレースで乗っていたら、自分との戦いになってしまいます(笑)。

札幌記念は僕もメーヴェで騎乗させてもらいますが、敵を知る貴重な経験をさせてもらいました(笑)。全馬を知るのは、他の出走馬にも調教つけないといけませんが(笑)、僕もトウケイヘイローとユタカさんにも注目しながら、札幌記念もがんばります!



【清水 久詞】Hisashi Shimizu

1972年大阪府出身。
2009年に調教師免許を取得。
2009年に厩舎開業。
初出走:
2009年6月21日3回阪神2日目11Rメイショウロッコー
初勝利:
2009年8月16日3回新潟2日目6Rチョウハイレベル


最近の主な重賞勝利
・13年函館記念・鳴尾記念・ダービー卿CT
(全てトウケイヘイロー号)


父親の清水貞光氏が冠名カルストンの馬主。幼少の頃より毎週競馬場に連れられており、牧場勤務を経た後に自然とこの世界に入る。「目指そうというよりも気がついた時には厩務員になっていた」と。
トレセン勤務後は定年での解散まで浜田光正厩舎に所属しており、当時に携わったのが牝馬2冠馬のファレノプシス。その思い出を「あの経験は未だにすごく大きなもの。古馬になってからのプレッシャーは大きかった」と語る。調教師になった後も「今こうやって調教師をしているのはいろんな人の力。人と人との繋がりを大事にしていくこと」と、絆をモットーにしている。