いざ、ダービーヘ スマートオーディンが快勝!

スマートオーディン

16年5月7日(土)3回京都5日目11R 第64回京都新聞杯(G2)(芝2200m)

スマートオーディン
(牡3、栗東・松田厩舎)
父:ダノンシャンティ
母:レディアップステージ
母父:Alzao

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毎日杯から京都新聞杯、そしてダービーへとあのキズナと同じ路線を歩むスマートオーディン。圧倒的人気に応えての勝利だった。スタートはユックリ。ブービーで最初のコーナーを廻る。2コーナーを廻ってから少しずつ前へと出ては行くが、後方に構えた。坂の下りでジワーっと順位を上げ最後のカーブを廻り、大外から直線に向いた時には先頭かの勢いであった。最後の2ハロンが10.8~11.9と、凄い切れを要求されるもの。前で受けたアグネスフォルテに半馬身と着差はそんなになかったが、危なげない勝利と言えよう。
デビュー以来、1800芝にこだわって使ってきたスマートオーディン。これで距離もコーナーも多く経験をした。いざ、ダービーへと新たな勢力として4強に待ったをかけるのか…。

パドックで馬をじっくりと見る。そして返し馬だ。この返し馬の方が、パドックで周回している時よりもその馬の特徴を掴める。馬は立ち姿でなく走る姿を見た方がずっと判ると、最近になって特に感じている。いくらパドックで悠々と歩いていても、走りが小さかったりすると実戦で動けていないケースを、まま見る。

今日は、2戦目のエルプシャフトと未勝利戦の勝ち方が強かったエルリストンを特に見たいと思って、わざわざ京都競馬場まで来ている。そして嫌な予感が、馬場入場して4コーナーへとキャンターに移る馬を見ていて、実感に変わっていった。エルリストンは、オーロラビジョンに反応してしまっている。やはりまだ幼い気持ちと判る。エルプシャフトは、後脚があまり入ってこないキャンターで去っていった。正直、ガッカリとする。ロイカバードの走りも小さい。やけに良く見えたのが、アグネスフォルテ。前走の不利を見ていないのが気になる。
肝心のスマートオーディンは、オーロラビジョンを過ぎるあたりまで外ラチを歩いていたが、そこからおもむろにキャンターに移っていった。もっとスイッチの入った仕上げをしてくるのかと思ったが、まだまだ余裕残しの造りに見えた。だがここでは負けられまいとも。

そしてスタートだ。スマートオーディンもユックリの出。エルプシャフトは出ていないのかダッシュがつかないのか最後方、スマートオーディンからまだ3馬身ぐらいの後ろだ。いくら長い距離だとはいいながらも、嬉しく思えない位置だろう。
カルムパシオンがステッキを1,2発入れ先頭へと立っていく。アグネスフォルテが続く。ブラックスピネルが外から前へと上がって行く。スタート直後から最初のカーブの1コーナーまではそこそこ流れて行くが、そこからはゆったりとなっていく。
スマートオーディンがブービーで、どんじりがエルプシャフトはスタート直後から変わらないが、前の馬との間隔が短くなって向こう正面を過ぎていく。スマートオーディンは持ったままで、やや馬の勢いが良すぎるぐらいの行きっぷりだ。
スマートオーディンの前は11頭が3列となっているが、ひと塊で横に広がって行っている感じであまり差はない。
坂を上って下っていく。スマートオーディンの前にはロイカバードで、その前にはブラックスピネルがいい感じで行っている。先頭のカルムパシオンの2番手をアグネスフォルテ。その後ろをエルリストンが内で待ち、外めをスワーヴカイザー、そしてブラックスピネルで、後ろのロイカバードが接近して4コーナーのカーブへと入っていく。

スマートオーディンも下りでかなり前へと進出していき、最後のカーブを廻る時には、ロイカバードの半馬身ぐらい後ろへと進出。かなりカーブを大きく廻っていった。
直線に入ってきて、全馬が見渡せるところとなった。ロイカバードの外のスマートオーディンは、もう前を捕らえた様な勢いまで感じる。その後ろにエルプシャフトも急接近してきている。内では先頭にアグネスフォルテが立っていた。
ラスト300を過ぎて、内のアグネスフォルテが追いだしている。スマートオーディンも戸崎Jが右ステッキで2発ぐらい入れた様だ。内のアグネスフォルテが渋太く伸びて行く。エルプシャフトも脚を使って来てはいるが、前を脅かすほどの脚色ではない。実際にはアグネスフォルテに1馬身もない着差しかつけられなかったが、実際に現場で見ている我々にはもっとあるかの様な勢いを感じていた。

火曜の朝に調教に出かける前に、京都新聞杯のビデオを流して観たりする。パトロール・ビデオも確認する。スマートオーディンがけっこう内へもたれているのを見た。ステッキは計5発ぐらい。もっと余裕を持っていたとみていたのだが、実際はそうでもなかったのかも知れない。ただパドックから馬場入りの馬を見て感じたのは、《まだ完全に仕上げていないな~》と思えた事だった。もっとギリギリに仕上げてくるだろうと思えていただけに、意外だと思えた。そこらを火曜朝のテーマにしよう・・と。

そして火曜朝のスタンドで松田国師に直接、話が出来た。『いや~、たいした事なかったでしょう?』といつものジョークなのか、卑下した入りである。だがその後で『この後にダービーも控えているんだから、目一杯の仕上げとは行かないからね~』であった。《併せた馬も、日曜の東京で勝ちましたものね~》の問にも、『あの馬も稽古は動く方なんですよ、それを離した追い切りでしたからね』であった。
79秒台の時計を出して、まだ目一杯でない。スマートオーディンのエネルギーは、すさまじいと思えるものだった。最後の『ダービーを勝つためにやっている事ですからね…』が、意味の深い言葉だった…。

毎日杯~京都新聞杯~ダービーへの新路線を、キズナと同じ様に歩んだスマートオーディン。NHKマイルCから中2週で輸送を2回することを考えると、関西馬にはこの京都新聞杯からのローテーションはいいのかも知れない。皐月賞をパスしたのも同じである。
これで重賞3勝目はNHKマイルCの勝者、メジャーエンブレムと同じ世代トップの勝ち星。ただ彼女はG1.2勝馬である。スマートオーディンが3歳馬最高のG1、ダービーを勝てるのかはこの後2週間の回復度合いによるだろう。そしてもっともっと中身の濃い相手との闘いが待っている。これでダービーがますます面白くなったのは、間違いないところである。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。