失礼しました、サトノダイヤモンドがちゃんと秋初戦を勝つ!

サトノダイヤモンド

16年9/25(日)4回阪神6日目11R 第64回神戸新聞杯(G2)(芝外2400m)

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パドックの周回でも落ち着きはらっているサトノダイヤモンド 。夏を越したのに《馬体増がない》《やけに線が薄いな~》と欠点を探そうとしている当方。この相手でも負けるとしたら今回しかないとの最初からの発想。だが馬場入りしをて返し馬に入っていく時の他馬とは違う何かを感じた。動じない、ブレない。そんな表現がふさわしい走り、雰囲気なのである。実戦でも好位の6番手にスッとつける序盤と負けない位置での競馬。最後は内からミッキーロケットが猛追してきたが、その動きにあわせてのゴールまでの追い合いでも、劣勢には一度もならず。これが王者、王の進む道なのであろう…と改めて感心させられたレース後であった…。

稽古の動きに不満があった。もうひとつ反応していない。そんな風にとらえていたサトノダイヤモンドの秋初戦。力は認めても、今回はあまり出来てないぞと。マカヒキがいない秋だが、負けるとしたら今回かもとワクワクしていた。
パドックをひとレース前から構えて待っていた。周回しだして、あろう事かロードヴァンドールが目の前で転倒してしまった。歩きやすいように工夫がされているパドックの地面。ナイロン製かの繊維で出来たところを歩く。その内には人口芝なのか緑がある。そこで滑ったのか、よもやのスリップをしてゴロリと転倒した。こんなレースに出てくる馬で、このようなことは見た事もない。
そして馬体増の少ないこと。エアスピネルとサトノダイヤモンドは±0である。穴馬の1頭と思えてたミッキーロケットは、10キロも体を減らしてしまった。そしてかなり成長したと言われているナムラシングンは、今回も入れ込んでいる。これには正直、ガッカリしてしまった。構想はモロくもこの段階で崩れおちてしまった…。

返し馬をひととおり見て、サトノダイヤモンドに紛れがあるかも知れないなんて思っていた事に恥じらいを覚えた。ダービーのパドックでも誰よりも落ち着いている馬。マカヒキの方がテンションが高かったぐらい。今回も微動だにしない。そして元々、ラインのスッキリした馬。細いぐらいに見える馬である。乗った者にしか判らない幅とか成長の部分であろうし、素人が横から見て何が判るのかと自戒して、馬券を買う気にもなれなかった。構想ではサトノダイヤモンドの紐づけやら3着づけ。ナムラシングンとミッキーロケットの夏に使った馬を頭、もしくは1,2着にするのもありかなの卑しい発想は通用しないと、自分ながらに感じていた。

大勢の人が見守るスタンド前からのスタート。イモータルがここでもうるさい。やっぱり出も悪かった。何が行くのだろうかと見ていると、やっぱりロードヴァンドールが出て行く。マイネルラフレシアにナムラシングン、そしてアグネスフォルテと前を形成していく。サトノダイヤモンドも好位と早めに前にいる。エアスピネルはと見ると、後ろから数えた方がいいぐらいの位置だ。これには驚きであった。ロードヴァンドールが少し後ろを離しての逃げ。けっこうな縦長の展開で、1コーナーから2コーナーへと進む。サトノダイヤモンドは前にナムラシングン、後ろにミッキーロケットを従えた前から8頭目、向こう正面に入って少しペースダウンをしたロードヴァンドール。後続との差がなくなった。1000mを1.01.4とユッタリの流れだ。エアスピネルは後ろから3頭目。レッドエルディストの方が前にいるとは予想だにもしなかった。

3コーナーを廻って、さっきよりも先頭から最後方までの間隔がなくなっていく。サトノダイヤモンドも同じ8頭目でも、差はグッと縮まった。アグネスフォルテ、ワンスインアライフ、ナムラシングンが動き始め、前は5頭が横並びになる様な形で4コーナーへと向かう。その真後ろにサトノダイヤモンド。レッドエルディストもサトノダイヤモンドの真後ろまで上がってきてカーブに入っていく。
まだ前の5頭が並んで直線へと入ってきた。サトノダイヤモンドはナムラシングンの真後ろでジッとしている。ラスト300mのオレンジ棒を過ぎるあたりで、ルメールJはゴーサインを出す。並ぶ間もなくナムラシングンを抜き去り、先頭に踊り出る。そのすぐ後ろを、今度はミッキーロケットが追随する。ミッキーロケットの外へ、レッドエルディストも脚を伸ばしてきている。エアスピネルはさらに外だ。

ラスト200mを過ぎたところで、ルメールJは左ステッキを入れる。ミッキーロケットが追ってくるのが判ったのだろうか。右ステッキで必死に追う和田Jのミッキーロケット。グングンと接近していく。レッドエルディストは前との差が開いてしまう。エアスピネルの伸びも思うほどでない。
前の2頭が叩き合う。サトノダイヤモンドに迫るミッキーロケットだが、ルメールJの追い方が、何かまだ余裕すらある様に見える。着差がクビなのであるが、もっとある様な気にさせるほどの鞍上の動き、所作なのである。そこから3馬身も離れた後ろで、レッドエルディストにカフジプリンスが交わす様な勢いで並んだところがゴールだった。エアスピネルはその後に入った。そこから3馬身後ろにナムラシングンが続いた。

検量室前の枠場のところで、エアスピネルを待つ間に笹田師に話を訊けた。《エアメサイアも秋のトライアル戦あたりから戦法を替えたから、もしかしたら今回はそんな騎乗をするのかもねと思っていた》である。指示は何も出していないらしい。折り合いは十分だったし手応えも悪くはなかったが、ガツンと伸びるところがなかった。武豊Jも『稽古の時と一緒でモタつくね~』と言っていた。
ミッキーロケットが、4コーナーに入ってくる時にスペースが狭くて前の馬(サトノダイヤモンド)に乗っかかりそうになって、和田Jの体が一瞬だけ上に浮いた瞬間があった。そんなハンデがあって、そこからあのクビ差まで来るのだから、もしかしたらがあったかも知れない。でも、サトノダイヤモンドがそれを含めてもちゃんと抑えてしまうのだから。

今日の仕上がりは8分もないと思える。この後の良化度を考えると東の雄、ディーマジェスティとはいい勝負、いや負けまいと思える。どうやら春と勢力はそんなに変わっていないと見た方が良さそうだ。
ミッキーロケットがデビュー以来で初めての馬体減と、今まで輸送でも減らなかった馬である。北海道シリーズよりも、体調面で下回ったかも知れない。それであのクビ差の接戦と、伸びしろを考えるとミッキーロケットが一番の昇り馬なのか知れない。菊花賞までもう少し時間もあろう。そこらを追跡調査するしかない。
そしてサトノダイヤモンドにとっての最大のライバル、マカヒキの晴れ舞台、凱旋門賞。来週の日曜夜が楽しみである。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。