【天皇賞(春)】元気すぎる10歳馬・カレンミロティック激走の予感…トレセン密着24時(仮)

カレンミロティック

10歳でも元気いっぱいのカレンミロティック

G1馬はメンバー中1頭のみ。「混戦」という声が尽きない2018年の天皇賞・春(G1)。2017年から大阪杯がG1に昇格したこともあってか、中距離タイプは大阪杯やドバイターフ、長距離タイプは天皇賞とシフトされてきた感を受ける。そんなステイヤー頂上決戦においても、3度目の挑戦とコース経験に一日の長があるのはカレンミロティック(セ10、栗東・平田厩舎)。現役きってのステイヤーも今年で10歳、年齢は二桁を数えるほどになった。大ベテランをデビューから担当する高坂助手は我が子を見守るような眼差しで語ってくれた。

「さすがに若い頃とは顔つきも体つきも変わりましたよね。10歳ですよ?まさかここまでやってくれるとは思いませんでした。この馬には色々な経験もさせてもらいましたよ」。

カレンミロティックは2010年にデビューすると、初勝利は4戦目。クラシックにも縁がなく、4歳時には去勢手術を行うと、5歳暮れの2013年の金鯱賞で重賞初勝利した遅咲きだ。G1勝利こそ手にしていないが、長距離を中心に活躍し、2014年には香港、2016年にはオーストラリアへ海外遠征した。

カレンミロティック

2016年の天皇賞で2着など競走馬としては、ステイヤーとしての活躍が際立つ。長距離=折り合いが楽、大人しい。そう思いがちだが、素顔は決して穏やかではない。「しょうがないな……」。おもむろに高坂助手がポロシャツを脱ぐと、肩は真っ赤。最近、噛まれたものという。確かに馬房の前に近づいてみれば、耳を絞って人を威嚇する。ハーツクライ産駒はスワーヴリチャードやジャスタウェイのように大人しいタイプの産駒もいるが、この気性は父に似たものだろう。

「10歳にもなりましたし、去勢はしているけど、性格はまだまだヤンチャ。今でも仕事中に油断ができません。最近でも他馬を威嚇していたほどです。基本、僕のことが嫌いなんでしょう(笑)。自分のほうが上だと思っているんですよ」。

そんなミロティックも、高坂助手に心を許したことがあるという。2014年に香港ヴァーズ(G1)に挑んだ際、現地で熱発。結果は5着とレースでは崩れなかったが、一時は出走が危ぶまれたほど体調を崩したそうだ。

「あの時は『助けてくれ~』と僕を頼ってきましたね。表情が普段と違いましたから。表情?もう何年もみていたら、顔をみれば何を考えているか、わかりますよ」。

一般的な円満な形ではないが、表情で相手の気持ちを汲み取れる、これはもはや熟練夫婦の域だろう。しかし、長きにわたる人馬もさすがのキャリア。そろそろ『引退』の2文字がチラつきはじめていることは確かだ。「放牧期間があるとはいえ、もう2歳からの付き合い、10歳なんて僕の息子と一緒の歳ですよ(笑)。無事に帰ってきてほしいよね」。高坂助手は謙虚に、しみじみと語っていた。

絶対王者キタサンブラックこそいなくなったが、世代レベルが高いといわれる4歳勢、昨年の2着馬シュヴァルグランなど、確かに相手は手強い。ただし、過去2度の挑戦でいずれも二桁人気ながら激走してきた実績がカレンミロティックにはある。

「やっぱりいつもこの時季に状態が上がってくるんですよね。繁殖シーズンだからか、セン馬だけど、元気になってくるんですよ。相性のいいジョッキーだし、いい枠を引ければ……。7歳の時ほど強気にはなれないけれど、今年のメンバーならひょっとしないかな」。

天皇賞といえば、とにかくリピーターが活躍するレース。ミロティックが輝きを取り戻すなら、この舞台ではないだろうか。

(競馬ラボ・小野田)