歴代最多となるJRA重賞連続出走記録を保持するヒットザターゲット。予定通り小倉大賞典出走となれば、これで40戦連続出走を数えるが、遂に引退というプランもあがっているという。初勝利まで7戦を要したばかりでなく、大賞典キラー、内枠での好走など、エピソードに富んだ明け10歳の個性派。デビューからヒットザターゲットを担当する清生裕丈調教助手に、これまでの道のりを振り返ってもらった。

若駒時は脚元や気性との闘い

-:清生助手はデビューからヒットザターゲット(牡10、栗東・加藤敬厩舎)を担当されているということですが、小倉大賞典(G3)でいよいよ引退とのこと。過去を振り返っていただくと、どんなことを思い出されますか?

清生裕丈調教助手:2歳の頃はもうハチャメチャでしたね。馬場に行かない、馬場で立ち上がる、走っていて立ち止まって立ち上がる……色々ありますね。

-:3歳時に取材をさせてもらったことがなく、当時のことはわかりかねるのですが、昔に乗っていた安藤勝己さんが「歩様を考えると、こんなに走るとは思わなかった」と言っていたのを思い出します。

清:そうですね。今でも硬いのですが、歩様の硬さがあるタイプなのです。ちょっと右脚を捻って走るので。

ヒットザターゲット

▲栗東トレセンでのホースマン人生の大半をヒットザターゲットと過ごしてきた清生助手

-:ちょっとガニ股というか。追い切り映像で坂路の正面からの映像を観るとわかりやすいですね。

清:ちょっとトモ脚を開いて走りますね。ビョーン、ビョーンという感じで。2歳の時も、それがあったのでジックリ、ジックリ調整していたのです。

-:外向は良くないとされますが、内向よりも外向の方がまだいいでしょうか?

清:まあ、そうですね。やっぱりたまに脚も張っているというか、浮腫んだりもしていたので。それでも、内向よりはまだマシですね。でも、やっぱり真っ直ぐ後ろに蹴っぱりするのが一番良いと思いますけどね。

-:今は追い切りに関しては、特に苦労するようなところは。

清:別にないですね。逆にこれくらい走らなくても、この馬の時計だろう、といったくらいなので。

-:気性的にもやっぱり難しいところはありましたか?

清:そうですね……。不真面目だったですし、今はそこまでではないですけど、走りたくないという気持ちの方が強かったような気がしますね。

-:そうして自分でセーブするところがあるから、これだけ長く走れるのでしょうか?

清:ここまで頑張れたというのもあって、全力でないので、よく言えば抜くところを分かっているのでしょうね。

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▲馬房でのヒットザターゲット 清生助手も「普段は余計なことをしない」と評する

-:清生さんはどうでしょうか?

清:僕は真面目なんで(笑)。

-:真面目と不真面目コンビですね。

清:そうですね、ハハハ(周りの厩舎スタッフから「真面目か?」とツッコミも)。

-:よくこの馬の好走条件として、みんな内枠と言うじゃないですか。その点についてはどう思われますか?

清:確かに、馬を内に入れた方があの馬は真面目に走るところがありますね。外に行っちゃうと、逆に気持ち良く走り過ぎて、気分良く走って終わりと。ある程度ストレスを掛けると、やっぱり最後の一伸びに繋がってくるので。今でもずっとそんな傾向があるので。

「スムーズじゃない時の方が走っているので。毎回、毎回、内枠の方が走っているなと思って、走っている時と走っていない時の情報を見た時に、そうだな、と思いましたね」


-:それは、清生さんはけっこう早くから気付かれていたのですか?

清:スムーズじゃない時の方が走っているので。毎回、毎回、内枠の方が走っているなと思って、走っている時と走っていない時の情報を見た時に、そうだな、と思いましたね。

-:やっぱり要因としては、気性面によるところがあったのですね。

清:そうですね。やっぱり気性面が一番大きいですね。

-:走る能力に関しては、ここまでの馬になると予感めいたところはありましたか?

清:正直、なかったです。オープンに行ったら良いなくらいで。それが、3歳の終わりに1000万、準オープンを連勝した時くらいにグッと馬が成長したというか、不真面目さが緩和された感じがあったので、このまま行ってくれたらと思ったら、その後すぐに(オープンの福島民報杯を)勝ってくれたので。

「大賞典キラー」 大賞典4勝目なるか?

-:目黒記念で勝った時は個人的にも注目させていただいていて、その年でしたか、札幌記念もスゴい脚で突っ込んで2着で、普通だったら天皇賞(秋)だったのでしょうが……。

清:ええ、ちょっと一頓挫あって。

-:あの流れで行っていたら、けっこう良いところはあったんでしょうけどね。

清:使えていたらなと今でも思うんですけどね。

-:あの時はかなり期待していたんですけれどね。有馬記念(13着)は枠順抽選会で内枠を引いて、一発あるか?と期待していたのを思い出します。

清:着順的にはコンマ7秒でしたが、もうちょっと抵抗しても良かったのかなと思いますね。中山が合わないというのもあるので。急坂が良くないので。

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-:結論を考えると坂だったのかなと、当時は思いました。今回は平坦の1800になりますからね。

清:なおかつ勝ったことがあるレース(小倉大賞典)ですからね。こういうコースだと、それこそ内枠が欲しくなります。

-:2週目ですし、特に内かと。

清:まだ行けるかなと。小牧さんも分かっていると思うので。

-:一時期は「大賞典キラー」と言われていましたね。

清:そうですね(笑)。阪神大賞典は距離体系が違ったので。ユタカさんに「これを勝ったら、全部勝つんじゃない?」と言われたんだけど、何しても距離が……。

-:ちなみに、東京大賞典という案はなかったですか。

清:なかったですね。ダートを使うというのが、周りの頭になかったので。1回くらいダートを使っても良かったと僕は思うんですけどね。

-:僕も硬いと聞いていたので、そういうのもありなのかなと思いました。

清:走ってもおかしくない硬さもあったし。ただ、砂を被った怖さがありましたね……。

-:それこそ内枠を引いたら、モロ被りですからね。

苦楽を共にしてきた8年 結実の舞台へ
ヒットザターゲット陣営インタビュー(後編)はコチラ⇒

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