「日本に来るのが夢だった」。そう語るジョッキーがいる。フィリップ・ミナリク騎手。笑顔を絶やさず、ファンサービスにも熱心、そして日本食を愛するなど大の親日家でもある。今回は生い立ちから知られざるチェコ競馬の世界、そして若手時代の苦労から、驚きのプライベートまでを余すことなく聞いた。高松宮記念はネロとのコンビでG1制覇を狙う名手が、溢れ出る日本愛でその全てを語りつくす。

2014年ジャパンCで初来日!念願だった短期免許取得

-:まずは今回、日本に来ることになったキッカケを教えてください。短期免許については以前から考えていらっしゃったのですか。

フィリップ・ミナリク騎手:(2014年の)ジャパンCでアイヴァンホウに騎乗したこともありましたが、その前からどうしても短期免許を取得して日本で競馬に乗りたいという夢を持っていました。アイヴァンホウでジャパンCに参加してからは、更にその気持ちが高まったので、申請を視野に入れながら条件を探っていました。昨年シュタルケ騎手の紹介で関係者の皆様とコンタクトを取ることが出来て、ちょうどドイツリーディングという結果も出しており、短期免許取得も可能ということで申請しました。今年ようやく夢の一つを掴むことが出来て、嬉しかったです。

ミナリク騎手

-:昨年のジャパンCの前から申請されていたのですか?

ミ:あの時はちょうどビザの申請中でした。JRAの条件をパスして、年明けに入国管理のビザが下りて、来日してJRAの面接を受けて最終決定がされるのですが、12月の時点でJRA側からは「申請可能だ」という話をもらっていました。

-:外国に乗りに行くことに対して、色々不安もあったと思います。

ミ:シンガポールとマカオで短期免許の経験はありました。そして日本で騎乗経験もあり、凄く仲良しのシュタルケ騎手やスボリッチ騎手から「競馬のレベルはシンガポール、マカオ、日本の3つの中では日本の一番高いし、安全だ」と、日本に関してポジティブで良い話を聞いていました。なので心配はしていませんでした。確かに来るまでは、日本の料理といったらちょっと分かるくらいでしたが、今のところは問題なく何でも食べられます。刺身など日本料理は大好きなんです。言葉の方は少しチャレンジではありましたけど、今のところ、普通の生活と競馬は問題ないです。どちらかと言うと不安よりも、楽しみの方が大きかったんです。日本に来ることに関しては、ポジティブで前向きに考えていました。

-:ご家族は反対されませんでしたか?

ミ:妻からの反対はなかったですね。妻は前回ジャパンCに参加した時に一緒に来日していて、日本が凄く良い国だということを分かっていたので、「乗る機会があったら、ぜひ行ってください」と言ってサポートしてくれました。そういう意味でも不安や心配はなかったですね。

-:素敵な奥様ですね。さて、ミナリク騎手の原点をお聞きしようと思います。元々チェコの首都・プラハで生まれたとお聞きしていますが、街の中心部で生まれたのですか?

ミ:プラハの中心から10キロくらい離れたところで生まれました。家から5キロくらいのところに厩舎がありましたね。

父はチェコのリーディング騎手 兄も同じ道へ

-:お父様はチェコのリーディングジョッキーだとお聞きしています。子どもの頃から競馬には慣れ親しんでいたのでしょうか?

ミ:まだチェコがチェコスロバキアという国の時代なのですが、父は2回国内リーディングを獲りました。しかし小さい時は母が「ジョッキーにはなるな。競馬業界には入るな」と反対していたんです。でも毎日学校が終わると厩舎に行ったり、毎週土日は競馬場に行ったりして、結局兄と私は共にジョッキーになりました。

-:お兄様は現在も現役なのですか。

ミ:いや、今は乗っていないです。兄はジョッキー時代に一度落馬をしてしまいまして、そのケガの影響でジョッキーは早めに辞めました。その後は調教師をやっていましたが、今は馬の世界を離れています。

-:ご家族揃ってジョッキーという家庭は日本でも珍しいです。

ミ:父が現役の時、父と兄と僕と3人で同じ競馬場で騎乗したことがあります。3人で同じレースに参加することは出来なかったのですけどね。同じ日に3人で競馬場に行って、検量室で隣同士ということも何回かありましたよ。

ミナリク騎手

-:他にスポーツはやられていなかったのでしょうか?チェコと言ったらアイスホッケーですが……。

ミ:サッカーも人気はありますが、チェコの場合は断トツの1番人気がアイスホッケーですね。私は体が小さくて向いていなかったものですから、アイスホッケーの選手経験はないです。ただ1998年に長野オリンピックでチェコが金メダルを獲った時は、国を挙げてお祭り騒ぎになりました。4日間くらいは誰も仕事に行かずに祭りの状態が続きましたよ(笑)このようにアイスホッケーの代表チームが活躍すると国が一番盛り上がります。

-:サッカーはされるのでしょうか?

ミ:正直、嫌いなことはないです。ただどちらかと言えば好きじゃなくて…。なぜかと言うと、ジョッキーが皆、一生懸命頑張っているのに、マスコミがあまり取り上げてくれないんです。話題を全部サッカーに取られてしまうので(笑)。例えばシュタルケ騎手がデインドリームで凱旋門賞を勝ったりした時も、裏面でちょっとしか載せてくれませんでしたし、ドイツの馬が凱旋門賞を優勝したのに、メインのニュースをサッカーに取られたということは、言い方はアレなのですが、ムカつくというか(笑)なので基本的にジョッキーはサッカーをあまり観ていないのかもしれません。

-:凱旋門賞で日本馬が勝ったら、日本ではまず間違いなくスポーツ新聞全紙が一面だと思います。

ミ:いいですね!間違いなく10年以内に日本の馬が凱旋門賞に勝つと思いますし、その時が来ることを応援しています。

-:その時に乗っているのがミナリク騎手かもしれません。

ミ:そうだったら、私も日本でレジェンド、ヒーローになれるかもしれませんね(笑)

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フィリップ・ミナリク騎手インタビュー(2P)はコチラ⇒