リトルゲルダ、夏の小倉で『女王』になった!!

リトルゲルダ

14年8月24日(日)2回小倉8日目11R 第49回 北九州記念(G3)(芝1200m)

リトルゲルダ
(牝5、栗東・鮫島厩舎)
父:Closing Argument
母:Bijoux Miss
母父:Buddha
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混戦の北九州記念を制したのは、エピセアロームでもなくベルカントでもなかった。同じ牝馬でも、外国産馬の5歳馬リトルゲルダであった。重賞に挑戦する事、5回目。アイビスSDには2年連続での参戦で、昨年3着と今年が4着。京阪杯8着に今年のシルクSで3着と善戦はしているが、印象的にはやや薄いリトルゲルダである。33.1と、この小倉芝の前半3Fのラップでは遅いぐらいの流れ。その絶好の3、4番手を進み、4角では先行する2頭の外めに出して先に抜け出そうとするメイショウイザヨイを、ゴール前で差しての重賞初制覇。いとも簡単に勝ってみせた丸田Jの重賞2勝目であった。またまた『関東ジョッキーが乗る関西馬』が勝った。このパターンでの勝利が今年は多いと思える…。


今週まで芝はAコース。8日目で朝からそぼ降る雨、発表は良でも、こころもち悪くなってきている感じはする。内を通るよりも、避けてくる馬が多い。ゴール前での伸びが違ったりもしていた。

そんな中での6F決戦。この小倉の芝では、2歳戦で32.3をマークしたのがニホンピロヘーラー。ちなみにこの馬はタイム・オーバーとなったが、次いでが佐世保Sを勝ったメイショウイザヨイで32.6ながら逃げ切ってみせた。小野厩舎の快進撃の1頭でもあった。しかしこのクラスだけに、もっと速い流れを想像するもの。現に昨年のこのレースで、アイラブリリは32.2で行った。

ところがなのである。同じ厩舎のアンバルブライベンがスッと先手を取った事で、アイラブリリもその先を奪う気持ちにはならない。メイショウイザヨイもすぐに2番手と、アンバルブライベンの先を行く気はない。最初の1Fが11.7の入りであるが、十分に息の入るもの。1F過ぎてアルマリンピア、最内のリトルゲルダが4、5番手に内から上がる。バーバラとベルカントがその外へと並ぶ。

前を行く先行馬が内目を行くのは当然。しかし5、6番手以降の馬が、PVを観ると軒並み馬場の内を避けて通っている。後方に位置していたカイシュウコロンボが、無人の内目をスイスイと上がっていくのが良く判る。

4角手前では前の2頭が並ぶ。アンバルブライベンにメイショウイザヨイがほぼ馬体を併せる感じ。その真後ろに白い馬体のリトルゲルダが、内のアイラブリリ、外のバーバラとの間を上がり気味だが、勢いは一番である。
カイシュウコロンボがもう真ん中に取り付いている。内目では5番手である。バーバラは馬場のいい処を選んで廻ってきた感じ。しかしその内が大きく開いている。そこにすーっと入ってくるリトルゲルダ。コーナーリングでこれ程に差が出るのかという程に、馬場の外目を廻る馬との差が大きく開く。

直線の半ばになると、もう内の4頭と外のバーバラまでと後続組との勢いが違ってくる。後続から来るには、それこそ物凄い脚でも使わないかぎり届かないのが誰にでも判った。そして何とか必死にメイショウイザヨイが逃げ込まんとする処を、キッチリとハナ差交わしたのがリトルゲルダであった。

リトルゲルダの意味は、アンデルセン童話の『雪の女王』からゲルダが雪の女王に連れ去られたカイという少年を探すという物語らしい。夏の北九州でカイ(買い)とは知らなかった…。
まあ、馬券的には、メイショウイザヨイが人気がなさ過ぎなのであろう。あざ笑うかの様に人気薄を連れてくる3連複、3連単の結果である。

火曜の朝、朝一番は坂路。そしてスタンドへと向かう。真っ先に顔を合わせたのが松田博師。当然に《おめでとうございます》だ。そして《いいレースでしたね~》であり、《それにしても、凄い人でしたんですね~》と続ける。『ありがとう』であり、『将棋倒しにならないか心配してた程、狭い処に入り過ぎやったわ~』と言っていた。

メイショウイザヨイの小野師は、『いや~勝ちたかった!』であったし『具合も良かったしね…』と出来の良さを強調していた。
角田師は『1番枠とか外枠はいやだったんだけど、あれなら1番枠の方が良かったね~。あれ程内がガラ空きになってしまうのが、小倉の後半の特徴だよな~』とあきらめ顔だった。

そしてベルカントは『2週間ばかり放牧に出して、スプリンターズSへ行きますよ~』だった。そうそう、石坂師とも話をした。『スタートがね…』のひと言で十分。スタートして2完歩行ったあたりで窮屈になっていたエピセアロームをPVで観た。

いや~いろんな事があった北九州記念でありましたな~。それにしても、この馬券を獲った人もいるんだから、恐れいります…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。