エイシンヒカリ、秋緒戦を綺麗に逃げ切る!

エイシンヒカリ

15年10月11日(日)4回東京2日目11R 第66回毎日王冠(G2)(芝1800m)

エイシンヒカリ
(牡4、栗東・坂口厩舎)
父:ディープインパクト
母:キャタリナ
母父:Storm Cat

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ディープインパクトの子供が10頭。他の3頭もみなサンデーサイレンスを父にもつ種牡馬ばかり。時代を象徴する様な毎日王冠となった。
天皇賞の前哨戦ながら賞金面で不確かな馬が多い、そんな中で終始1番人気に支持されたエイシンヒカリが、ゲートから一度も並ばせずに逃げ切って優先出走権をも確保した。好位追走のディサイファが、久々ながら力のある処を見せるイスラボニータを交して2着。見ごたえのある毎日王冠であった…。


馬券が発売され始めてから、ズーッとエイシンヒカリにアンビシャスが追いつきそうな人気。しかしどの馬にもチャンスありと思える豪華な顔ぶれで、予想にも悩む一戦だった。パドックで周回している各馬を見ていて、《同じディープインパクトの子供なのにこれだけ体型が違って出るもんだな~》と、血統の不思議を感じていた。イスラボニータがバンテージも巻いていないし、スッキリしたいい体をしているのがやけに気になった。
早めに席に戻り、返し馬を最後まで観る。《グランデッツァってこんなに硬かったか?》と思ったり、《トーセンスターダムが体が減っているけど雰囲気いいな~》なんて思いながら、スタートを待つ。


ポケットから2コーナーの手前にあるゲートまで近づいてくる間に、エイシンヒカリのテンションがドンドンと上がる。これ以上は、そのやる気も要らないと思えるほど。《最外枠でゲートが後入れで良かったな~》なんて思う。よしんば内を引いてこのテンションで他馬が入るのを待ちきれるかどうか。イロイロと考えるものだ。

そしてゲート・オープン。思わず場内がドッと湧く。アンビシャスが一瞬で皆よりも後ろとなったからだ。後でPVを見るが別段、出遅れている訳ではないと思っていたのだが、出てから躓いたのを後日の映像で見た。あれでは仕方あるまい。エイシンヒカリが外から内へと入って行く。最内のグランデッツァにヴァンセンヌが、いつもより前にいる。その鼻先をかすめるように内へ入って落ちつく。

ややグランデッツァが頭を振るシーンがあった。遅くて、少しだけ前向きになったのだろう。淡々と進む。9レースでもそうだったように先行、内有利の馬場コンディションは誰でも知っている。だから隊列は内でタイトに繋がる。2,3番手の福永横山典Jが不気味だ。その後ろにディサイファ、イスラボニータがいる。リアルインパクトだけが馬群の中に入れずに、外々を廻る感じだ。

3コーナーは、そう隊列は変わらずに過ぎる。4コーナー手前では、2番手グループの外にリアルインパクトが並びかげんとなる。その後ろのイスラボニータとその内のディサイファがいい手応えで待っている。
直線に入ってきた。ラスト400を過ぎても、まだエイシンヒカリの武豊Jの手綱は動かない。さらに進んで、ラスト300を合図に右ステッキがうなりだす。2番手グループの外へイスラボニータが出てくる。その後ろからダノンシャークも上がって来ている。エイシンヒカリがジリジリっと先頭だが、後ろとの差もそうはない。後もう少し、あともう少し。思わず席を立ち上がり応援しだす。
イスラボニータの外へ出したディサイファが、2番手に上がる。何とかエイシンヒカリは後続との差を開いたままゴールした様だ。武豊Jが、ゴールを過ぎて右のこぶしで小さくガッツポーズをするのが見えた。

エレベータで先に下りて、坂口師が下りてくるのを待つ。握手をする。坂口助手も現れてまた握手する。枠場のところで携帯電話で話し中の平井オーナーが終るのを待つ。そして握手をさせて貰う。担当さんと周回しているエイシンヒカリの傍に行く。《息はどうですか?》と訊く。《エエ、すぐに入りましたよ、ほら、ネッ!》と涼しげに周回しているエイシンヒカリを観て安心した。

月曜の京都競馬場。次の騎乗を待つ合間に、ちょっと蛯名Jに話を訊いてみた。《パドックでイスラボニータを見て出来ているなと感じたし、実際いい競馬だったんじゃない?》と向ける。『ウン、手応え良く来ていたし、豊の馬を可愛がるぐらいの気持ちで待っていたんだよ。そしたら急に手応えがなくなっちゃって…。やっぱりあそこが久々だろうね。でもやっぱり走るよ~》と語ってくれた。武豊Jも加わってイロイロと話は盛り上がった。

まずは、秋にいいスタートを切れた毎日王冠のお話でありました。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。