大外を一気、バクシンテイオーが夏の小倉で重賞初制覇!

バクシンテイオー

16年8/21(日)2回小倉8日目11R 第51回北九州記念(G3)(芝1200m)

  • バクシンテイオー
  • (牡7、美浦・堀厩舎)
  • 父:サクラバクシンオー
  • 母:アウトオブザウィム
  • 母父:サンデーサイレンス

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フルールシチーが、熱射病のために下見所で競走除外となるハプニングがあった様だ。全国で続く猛暑のなか、小倉もさぞ暑かったのだろう。1頭減って12頭立てと、最近ではない馬数となった。昨年もここを勝ってサマースプリントの王者となったベルカント。今年もなぞる様に同じ路線を進む。アイビス・サマーダッシュを勝って、昨年よりも1キロ増しの56キロ。そこだけが問題かと思えたが、3番手から直線で先頭に立った時はやはり夏馬と思えたものだが、そこからが昨年の様な伸びがない。ややもたついているうちに、大外を目の覚めるような末脚でバクシンテイオーがあっさりと抜け出て、初重賞に輝いた。札幌記念に景気づけの堀厩舎の勝利であった。

33.6と、このクラスとしては流れが緩やか。昨年は32.9で一昨年は33.1で、ツルマルレオンが勝った3年前は32.2の、超ハイペースで推移されるレースである。ところが今年は確たる逃げ馬不在と思えるメンバー構成。ベルカントの先手まで考えられる流れが予測された。
スタートでは、ベルルミエールが馬群から1頭だけ置かれる。外枠の2頭が早い。大外ラヴァーズポイントにジャストドゥイングが前に出ていた。真ん中のマイネルエテルネルがそれに続く好発。ベルカントはそんなに早くなかった。ゲートを出た瞬間に頭が少し浮いた。ゲート内で頭を上げた時に開いた様で、タイミングがドンピシャリではなかった様だ。そこから少しだけシャクって、ミルコ・デムーロはうながして前に出ていった様だ。その時にバクシンテイオーはどうだったかをビデオで見てみる。スタートは悪くなかったバクシンテイオー。しかしその後はジワっとして、後ろへと下げるというか、自然と他の馬が前へ前へと行くので、ベルルミエールのすぐ前の位置とする。

3番手に取り付いたベルカント。前ではラヴァーズポイントの内へと、ジャストドゥイングが入って体を並べる様に行く。ベルカントはジャストドゥイングの外へと出している。オウノミチ、メイショウライナーが前のグループの一番最後。そこから3馬身離れてバクシンテイオーの第2グループだ。3コーナーを廻る時には後ろの2頭も前との間隔がだいぶなくなり、3ハロン通過の時にはバクシンテイオーはメイショウライナーのすぐ後ろ。前は2頭が並び、その後ろもベルカントとプリンセスムーンが並んで通過、オウノミチがちょうど真ん中の位置か。ベルカントは持ったままで前の2頭へと並び抜きさる勢いで、4コーナーへと入っていく。その外へプリンセスムーンで、さらにオウノミチが大外へ一気に取り付いてきた。ここでは最後方のベルルミエールまでは5馬身あるかないか。バクシンテイオーが外へ出して追ってきているのが見える。

カーブを廻って直線に入ってきた時には、ラヴァーズポイントの勢いがなかった。内で粘るジャストドゥイング。外にはベルカントと同じ勝負服だ。その瞬間に内へもたれるベルカント。手綱を矯正するM・デムーロ。この瞬間が後で思えばロスタイムだったか。ベルカントの癖である。内にいるジャストドゥイングをそう離せないでいるが、それでもオウノミチの勢いには負けないベルカント。だが大外から一気のバクシンテイオーには、抵抗する脚は残っていなかった。
ひとつ前のレースで、先行した2頭が直線で馬場の真ん中を通ってきていた。少し内が痛んでいているのかも知れない。ベルカントが通る内目よりも、バクシンテイオーの外は伸びが違うのかも知れない。昨年のベルカントは最後の1ハロンを11.5で駆け抜けたが、今年は12.1のラップなのに粘れていない。昨年よりも1キロ増しと、スタートでの見えないロス。直線のラスト200m少し手前で、内にもたれたところ。これらが1馬身差に出たのだろうと推測する。

ただ、バクシンテイオーには恐れ入る。まずは藤岡康太Jの好騎乗であろう。スタートは五分だが、そこから脚を貯める乗り方。よく武豊Jがやる騎乗だ。先行馬は、多頭数で後ろがごちゃつくのがいい。逆に差し馬は、前にいる馬が少ない方が、外を廻るロスも少ない。12頭立てで流れもついていくのに、そう速くない流れ。この日の朝の1Rの2歳未勝利戦でダノンチャンスが勝った流れと、そうは変わらない数字である。
バクシンテイオーは昨年が6着。今年は早めの入厩であったそうだ。2年前の夏にオープン入りしてから11戦目。見事重賞制覇までこぎつけた。そして札幌記念のあの結果へと進んでいった、暑い夏の日の出来事でありました。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。