『黄金の王』レイデオロ揺るがず 秋緒戦も盤石の構え!!【平林雅芳の目】

神戸新聞杯を快勝したレイデオロ

17年9/24(日)4回阪神7日目11R 第65回神戸新聞杯(G2)(芝2400m)

  • レイデオロ
  • (牡3、美浦・藤沢和厩舎)
  • 父:キングカメハメハ
  • 母:ラドラーダ
  • 母父:シンボリクリスエス

神戸新聞杯の結果・払戻金はコチラ⇒

最強の3歳馬レイデオロ。ダービー馬の秋緒戦でもあり、菊花賞でなくジャパンカップがこの秋の最大目標と言われているだけに、仕上げは厳しいものではないだろうと憶測をしたりもする。単勝オッズの2.2倍は、そんな心理がファンにもあったのだろうか。
しかし蓋を開けてみると、教育のために左ステッキを2発入れただけの勝ち方。強め程度でに収めたと言っていい余裕残しの勝ち方であった。
上がり馬キセキが2馬身差の2着。3着にはサトノアーサーが直線で伸びて確保。ダンビュライトは善戦虚しい4着だった。1番人気から4番人気が、その支持どおりの着順となった。

パドックで周回しているレイデオロを見て、ダービー時を思いだした。あの時はパドックで誰よりも汗をかいていた。パドックに入った当初にかなり入れ込むと言うか、やんちゃぶりを見せていたレイデオロ。その後で2人引きになってからはだいぶ落ちついたけれども、あれをみて危ないなと感じた素人考えを思いだした。そして誰よりも先に馬場入りしたっけと、そんなシーンが思いだされた。
それに比べたら、今日のパドックは随分とおとなしくなった方だろうと観ていた。少しだけうるさいところはあるが、それでもかなり大人になった印象である。ベストアプローチやマイスタイルが落ちつかないのを見て、この馬達では適わないなと素人目にも判った気がした。騎乗合図でジョッキーが跨るのを見てから、いつもの席へと戻った。

やっぱり今日もレイデオロは誰よりも先に馬場に入ってきた。それを見つめる関係者のなかに、武幸四郎調教師もいた。そう、藤沢和厩舎で研修を続けている。昨日から何度か勝った時の枠場とかで姿を見ていた。今日は藤沢和師も駆けつけていた。地下道からゆっくりといつもの歩調で出てきてキャンターで遠ざかる愛馬を見つめていた。
キセキのキャンターもいい。ダンビュライトも馬の感じではひけをとらない。これで権利を取れない様では実力不足なんだろうなと思えた。
そして展開面で有利だと思い込んでいたマイスタイル。パドックから何となく頼りがいがない。まだまだ子供子供している感じである。馬場入りした後に1コーナーの方へと一旦遠回りをしてから、一番最後にキャンターに移っていった。これは横山典Jが得意とするキャンターでのレースの入りだが、今日は走る日ではないな~と感じるものであった。

生演奏のファンファーレで盛り上がる場内。スタートはダンビュライトも良かったが、レイデオロも飛び出して行った。走りたくて仕方ないのだろう。アダムバローズが一番前に出てマイスタイルが2番手かと思っていたが、意外ともたついていた。先にダンビュライトが前に出てマイスタイルはその外へ、それを嫌がって内へ入れて3番手になった。レイデオロ、そしてサトノアーサーと続く。
1コーナーの入りあたりで、内のサトノアーサーが頭を振るシーンがあった。前との間隔の問題か折り合いの問題か。キセキは中団のグループで、内ラチ沿いの前から8頭目のところにいた。アダムバローズの逃げは淡々としたもので、2ハロンめだけ11.8で後はおしなべての12秒台の前半で行く。

2コーナーを過ぎたあたりで中団グループが前との差を詰めたのか、キセキの位置が10頭目と順位が下がる。少し前を行くベストアプローチが内ラチから少し前へと出て行った。しかし前の5頭は等間隔で、前半の1000mを通過。1.01.4とかなりゆったりした流れである。
3コーナーの坂を上がって行く時に、前の4頭の間隔が少し狭まっていく。マイスタイルが差を詰めて、後ろのレイデオロも続いた。完全に前有利な流れである。後はどこでレイデオロが仕掛けるのかだろう。
ラスト800mの標識で、レイデオロがマイスタイルの外へ並び前との間隔をさらに詰める。ここから一気にペースが上がっていく。後ろのサトノアーサーの差が2馬身と開いた。だがまだ誰も仕掛けてはいない。ラスト600mの標識。一気に前と後ろの差がなくなってきた。

ダンビュライトが、アダムバローズの外へ上がっている。その後をレイデオロが3番手に上がって最後のカーブへと入ってきた。武豊Jが先に仕掛けてアダムバローズを交わして先頭に立った。ラスト300mのオレンジ棒の前である。
時を同じくして、レイデオロもルメールの手が動いてゴーサインをだす。サトノアーサーは外へ出してきた。すでにステッキを入れている。キセキがインで差を詰めてきていて、ベストアプローチとマイスタイルの間を縫ってきて前を伺う勢いである。
武豊Jが右ステッキを入れて追いだした。半馬身差のレイデオロはまだ追わない。ラスト200mを過ぎてダンビュライトの外へ並び抜いてから、ルメールJが左ステッキを1発、そしてまた1発と入れる。キセキがサトノアーサーの内から前へと上がり2番手となって前を追う。だが後ろの馬よりもレイデオロのストライドの方が大きい。

ルメールJは、ただ手綱をシャクるだけの所作でゴールへ。キセキが3F最速の上がり脚を使って2着だが、前とは2馬身の差。ダンビュライトが粘ろうかとの時に、サトノアーサーがゆっくりと交わして菊への権利を奪い取っていった。アドマイヤウィナーが5着、ベストアプローチ、そしてマイスタイル。カデナは9着で秋の緒戦を終えた。

着差の2馬身以上の力差を感じる戦いであった。このまま3歳馬どうしの戦いではなく、日本馬の頂点のジャパンカップを目指す黄金の王、レイデオロ。文句をつけるところがなさそうである。3歳馬同士の3冠目の菊花賞が、ちと残念な顔ぶれとなってしまうのは仕方ないところか。

火曜朝に音無師に今後の予定を訊きたかったが牧場へ行っていて留守、角居師がいたがキセキのレースの感想を聞くのも失礼だから触れませんでした。それほどにレイデオロのインパクトが強く残ってしまった、菊トライアルの神戸新聞杯でありました。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。