ジャパンC制覇ボウマンに見たミルコ&ルメールとの共通点…こちら検量室前派出所(仮)

シュヴァルグラン

ジャパンカップを制したシュヴァルグラン

今年の東京競馬の総決算となった、11月26日(日)のジャパンカップ(G1)。東京競馬場は前年より多い、11万人近くの観客で埋まった。あまりの混み具合に、検量室前パトロール隊員はのんびりうどんを食べに行くこともできなかった。2月の開催までうどんが食べられないと思うと、悲しくて夜も眠れない。

さて話は変わり、検量室前。この日は朝からいつもの4倍近い人がおり、ごった返していた。とにかく外国人が多い。盛んに英語が飛び交い、高校生の時に英語の授業を真面目に受けていなかった隊員は何を言っているのかサッパリである。

アイダホ、ブームタイム、イキートス、ギニョールと4頭の海外馬が出走したことで、ジャパンCに騎乗する外国出身騎手は8人にも上った。これにより発生するのは通訳の問題。1人あたり1人の通訳が付くため、検量室から次々と外国人騎手と通訳が出てくる。誰が誰なのかもう分からない状況だ。

レース後に騎手コメントを取る記者たちも「あれはムーア騎手の通訳だよな?」「いや、あれはC.デムーロ騎手の通訳だ」という言葉が飛び交うなど、てんやわんやだった。

そんな中、「オツカレサマデース!」と言いながら脇を通り過ぎるのはM.デムーロ騎手。こういう時に通訳がいらず、日本語がペラペラのM.デムーロ騎手はありがたい。ルメール騎手は家族も来ており、家族に囲まれたルメール騎手は笑顔。家族を愛するルメール騎手にとって、これは心強い応援団だっただろう。

いよいよジャパンCが近づいてきた。外国人の数はさらに増え、もう誰がどの陣営なのかまるで分からない。出走馬が地下馬道を通過した後、パドックから出てきた人数の多さ。通勤・通学ラッシュ時の新宿駅並みの人の数である。

その20分後、シュヴァルグランが初戴冠。佐々木主浩オーナーは検量室前で喜びを爆発させていた。オーナーにとっては初の牡馬G1。自身が愛したハルーワスウィートの子どもで達成しただけに、喜びもひとしおだろう。

騎乗したのはH.ボウマン騎手。オーストラリアで毎年リーディング争いを演じる、オセアニアNO.1の評価を得る名手である。レース後のコメントもわかりやすく、サービス精神も旺盛な好漢だ。そんな名手が東京10R・ウェルカムSでショウナンマルシェに騎乗して2着だったレース後のコメントが興味深かった。

「過去のレースVTRを何度も確認したところ、他馬に対して耳を絞る素振りが見られました。なので、まずはリラックスさせて走らせることを心がけました。最後までよく頑張ってくれています」。

ショウナンマルシェは確かに気性が難しい馬だが、耳を絞る仕草でそれを把握、対策を練るあたりが、さすがオセアニアNO.1の評価を得るだけある。

M.デムーロ騎手もそうだが、外国出身のトップジョッキー達はVTRでよく研究して乗る。日本人騎手が研究していないというわけではなく、耳を絞る仕草や、細かい点についても把握した上で、勝負を掛けてくる。いい馬に乗ったからだけでなく、いい馬の力を最大限発揮できる、その準備力という点は評価されるべきところだろう。

そういえば、パドックから地下馬道に出てきた馬たちを眺めていたパトロール隊員に、声を掛けてくる外国人女性がいた。持ち物から察するにギニョールの陣営と思われるが、女性は笑顔で話しかけてくる。ドイツ訛りの英語なのか、まったく聞き取れない。そもそも日本語も危うい隊員に英語で話し掛けてはいけない。

何となく頷いていたら、向こうも納得したのか「グッドラック!」と声を掛けてきて、すぐ女性は行ってしまった。隊員は駅前留学を選択肢に入れた。