栗東の小崎憲調教師を父に持ち、将来を嘱望されていた小崎綾也騎手。しかし、デビューを目前にして、眼窩底骨折で同期よりも遅れをとっての初騎乗。2年目には下腿骨骨折、さらには負傷の影響により、手術で戦線離脱とここまでのキャリアは波乱万丈だ。しかし、北の大地で仕事に勤しむ姿は若さが溢れるヤングジョッキーの姿そのもの。ここまでのキャリアを振り返ると共に、再起を期す騎手人生について、熱く語ってもらった。

デビューイヤー以来の北海道 とにかく経験値を

-:函館競馬場でたくさん調教に騎乗された後の小崎騎手に伺います。よろしくお願いします。調教後ですが、元気ですね。

小崎綾也騎手:ハイ、若いので元気なところはアピールしていきたいです。

-:デビューイヤーも北海道では騎乗されていましたが、去年、一昨年と夏競馬自体に参加できませんでしたよね。今年、北海道に活躍の場を求めた理由から教えていただけますか?

小: 1年目に北海道で滞在したことがすごく勉強になった感触がありました。調教にもたくさん乗れますし、1年目なので3キロ減もありましたからね。当時はレースにもたくさん乗せてもらって、良い経験値になったので、また、その経験値が欲しいと思って、3年振りに来ました。

小崎綾也

-:それは、自分自身の決定ですか?

小:そうですね。夏は、僕がある程度どこで乗るか決めて良かったので「向こう(関西)に残るか、こっちか?」と聞かれたのですが、僕の判断で来ました。

-:(取材時点で)函館開催はもうすぐ終わりますが、今のところの収穫、手応えはいかがですか?

小:たくさん調教に乗って、レースに行けるというのは勉強になりますし、上手いジョッキーとこの小回りコースで乗れるのは、レースの経験値を積めると思います。ただ、実際はレースでそんなに数を乗れていないこと、勝ち鞍が足りない部分はちょっとまだまだかなと思っています。

-:こうして若手の皆さんの動きを見ていても調教が終わったら、次の馬に乗る準備と、栗東と比べても、必然的に頭数は増えますね。

小:そうですね。圧倒的に多いですね。

小崎綾也

-:東西の所属問わずに乗れるところも大きいんじゃないでしょうか?

小:僕が1年目の夏に来た時も、関東馬にたくさん乗せてもらいましたし、その経緯で、秋のローカルの時でもその繋がりで乗せてもらったりしたこともありました。色々な馬に乗れるので、そういう関東との繋がりという面では北海道は良いと思います。

-:「久々だね」なんて声はありましたか?

小:ありました。特に関東の人には声を掛けてもらいましたし、今年はジョッキーが多くて、けっこう乗り鞍がバラけている感じはあるのですが、どうしてもレースの数を乗らないと……。やっぱり分母を多くしないと勝ち鞍も増えないので、もう少し乗りたいです。例えば、僕らのように若手ならば勝率1割(10%)を超すのはなかなか難しいですし、やっぱり勝率6~7%あたりだと、100鞍乗っても7勝。夏の間に80鞍乗れたら5~6勝という感じなので、そう考えると、もう少し分母を多くしたいですね。

-:その点は札幌でもう少し挽回できれば……。

小:そうですね。勝っている馬をまた頼まれたりしますし。ただ、札幌はジョッキーのレベルも上がりますし、外国人の方も来ます。厳しい環境にはなるかもしれないですが、今はそういうところで揉まれて経験を積みたいですね。

騎手として約4年 うち2年はリハビリの日々

-:デビュー以来の滞在競馬になった理由の一つに、ケガもあったと思います。今は気になるところはなく、順調に乗れているのですか?

小:乗ることに関しては問題ないですね。

-:将来を嘱望されながら、今までケガや手術で離脱する期間が多かったですよね。少し振り返っていただきたいのですが、まず、デビュー前に眼の骨折をされました。

小:そうですね。デビューが近くなった時にケガをしてしまいました。最初は悔しかったのですが、デビューしてからは色々な人の支えがあって、順調に勝てたとは思います。ケガをして遅れたにも関わらず、デビュー日にも勝たせてもらいましたし、いま思えば、ある意味で目立てたかなと思いますよね。

小崎綾也

-:眼窩底骨折と。なかなか一般の人は経験しないケガですよね。スポーツや格闘技で聞くような。

小:その時は馬に頭突きを食らってしまって。それで鼻が折れる人もいるのですが、僕の場合は頬でした。痛みよりも、三半規管が狂いましたね。眼の下が折れたので、眼の筋肉が落ちて、画面が2つあるような……。

-:ボヤける感じですか?

小:片方の眼は真っ直ぐ見ているんですけど、もう片方だけ変な方を向いているというか、もう気持ち悪くて。痛みはほんの一瞬だけでしたけど、感覚的に厳しかったですね。

-:そして、2年前は左下腿骨々折をしてしまいました。

小:色々な人のバックアップもあって1年目は38勝できて、2年目もケガをするまでに14勝くらい、1週間に1勝ペースくらいは勝てていましたし、たくさん数も乗せてもらっていたので、順調に勢いに乗ってきた時だったのですが……。そういう時に限ってやっぱり落馬でケガをしてしまったので。あれは情けなくて、悔しかったです。

「先輩方を見ていると、40(歳)を過ぎてもまだ乗っている人もいっぱいいますし、僕もこれから20年以上あると考えたら、やっぱりしっかり治した方が良いなと。半年掛かってしまったのですが、踏み切りました」


-:入院期間はどれくらいだったのですか?

小:実質入院したのは1カ月なかったのですが、休んだのは8カ月くらいも掛かりました。脛(スネ)でしたが、脛が2本ともバッキリ折れて。

-:それもまた手術をするために離脱されたわけですよね。

小:そうですね。1回復帰しましたが、馬に乗る負荷が思っていたよりも強かったです。馬に乗り始めてから、骨膜が過剰に反応してしまいました。体が治そうと思って、骨が異常に反応して盛り上がってきた感じで。

-:小さな鐙につま先で乗らなくちゃいけない仕事。負荷は大きいですよね。

小:そうですね。脚にどうしても負荷が掛かりやすいですし、馬と接している面って、やっぱり下半身だけなので。それで、横のしなりもあります。そうして掛かる負荷が強かったのもあって、手術に踏み切ったんですけどね。先輩方を見ていると、40(歳)を過ぎてもまだ乗っている人もいっぱいいますし、僕もこれから20年以上あると考えたら、やっぱりしっかり治した方が良いなと。半年掛かってしまったのですが、踏み切りました。

-:時間をかけた甲斐はあったわけですね。

小:半年休んでしっかり治したので、今は本当に体の調子が良いです。休んでいる期間中、体の他の部分も良い体づくりができたので、今、体自体は不安なく乗れています。

「ブランクが強みになるよう努力を そして、下半期は海外へ」
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