お見事、岩田J 4馬身差の逃げ切り、レッツゴードンキだ!!

レッツゴードンキ

15年4月12日(日)2回阪神6日目11R 第75回桜花賞(G1)(芝外1600m)

レッツゴードンキ
(牝3、栗東・梅田厩舎)
父:キングカメハメハ
母:マルトク
母父:マーベラスサンデー

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こんなにも楽に勝つ桜花賞を近年観た覚えがない。それ程に、直線半ばでは後ろとの差が決定的となったレッツゴードンキ。上がりの数字は、観て唖然とする33.5。ひとり旅で誰にも競りかけられもせずに直線まで来たレッツゴードンキ。後続が横一列に並ぶラスト1ハロン。その中には、圧倒的1番人気のルージュバックは参加していなかった。まるで伸びる気配もなく、その横一列にも入れなかった。今までの3戦は幻だったのかと思える程に、アッサリと負けた無敗馬。競馬って本当に難しいのね~…と毎度のことながら感じるばかりでした…。

パドックを、1レース前の馬が出ていった後で待つ。入場から観るためでもある。
真っ先に来たのが馬番どおりでなく、11番のキャットコインだった。それも廻りをキョロキョロ、首を伸ばし、眼が泳いでいる感じだった。そしてやはり数字どおりに細い、栗東で観た時よりもまだ細く写る。
ルージュバックはと見つめる。京都で観た時は《ポルトドートウィユとどっちが牡馬だ~》と思える程のボリューム感に圧倒されたのだが、今日は何かこじんまりと見える。まるで違う馬である。あの京都では何を観ていたのだろかと、自分を疑う。
むしろ違う馬で、黒光りする好馬体を感じるノットフォーマル。とっても良く見えた。

何かピンと来ないまま、パドックを早めに切り上げ返し馬を待つ。走らせたらルージュバックは悪くない。大きな飛びだ。コッテッサトゥーレが硬くみえる。パドックではちょっといいかとも思ったが、メモに×をつける。《逃げようとする馬がいないね~》と武豊Jと話した。『内なら逃げる手もあるけど…』と言っていたが、《スタートが決まれば行くかも知れないな~》と、心の中で是非そうなる様にと願っていた。

ここ一番でロケットスタートをする事がある武豊J、しかしゲートが開いた瞬間にそれはないのが判る。押して行く人ではない。内のムーンエクスプレスが出が悪くなく、ノットフォーマルは二の脚で前へと出て来た。しかし1ハロンを過ぎる時でも、その2頭が出て行く気配がない。そうこうしているうちに、岩田Jのレッツゴードンキが今日も行った。2ハロン目ではまだムーンエクスプレスが半馬身差で内にはいたが、先頭に立とうの意思表示がなかった様子。岩田Jもやや立った感じでの先頭、ここらではまだ出方を伺っていたのかも知れない。その後ろではノットフォーマル、すぐ後ろにコンテッサトゥーレが続く。中団がゴッタ返し、ルージュバックがやや掛かり気味なのか、前にいるテンダリーヴォイスと2頭でジョッキーの姿勢が突っ立っていた。
3コーナーのカーブを廻っていく頃には、2馬身近いリードとなったレッツゴードンキ。最後方にポツンとクールホタルビだが、その前がキャットコインで4馬身ぐらい開いている。ユッタリと進んでいるのがスタンドからでも良く判るペースだ。
800mを前にして、2番手にノットフォーマルが上がる。アースライズレオパルディナと続く。ルージュバックは馬群の後ろの方だ。

4コーナーが近づいてくる。後続が少しだけ間合いを詰めてきたのだろう。レッツゴードンキの外に、だいぶ馬が固まって見えだす。そして全体の姿が見えた直線入り口。ここではレッツゴードンキのリードはそうある様には見えなかった。当然にどの馬も手応えはかなりいい。しかし脚を貯めに貯めていたのは、レッツゴードンキが一番であった。みんなが追いだしたラスト300mのオレンジ棒を通過する時には、差がまた開きだしたのである。
後ろからルージュバックが来ると思っていた、私をはじめとする大勢のスタンドのファン。しかし染め分け帽のキャロットの勝負服は、いっこうに姿が見えない。むしろ同じ帽色の馬が伸び出して来ているのが判る。
しかし先頭はますますレッツゴードンキ。200mのハロン棒を過ぎても、まだ岩田Jは追わない。そしてラスト130mぐらいの処で左ステッキを1、2発と入れていき、結果5発のステッキを入れ、最後は流し気味でのゴールを迎えていた。ゴール過ぎに、左手のこぶしで小さくガッツポーズをしたのを見逃さなかった。

3戦無敗馬は、クイーンズリングが4着。キャットコインが7着であり、1.6倍の圧倒的人気のルージュバックは9着だった。この上がり33.5とかなりの切れ比べの中で一番の脚は、6着のアンドリエッテ。勝馬を上廻る33.2ながら4コーナーをブービーで廻り、ルージュバックの内から抜いてきたが、位置取りが後ろすぎたのだろう、ここでは上位までは入れなかった。
レッツゴードンキが記した数字、ゴールから2ハロン目が10.7で、最後の1ハロンが11.5。これでは後ろの馬は当然に空でも飛ばないかぎり前には来れない。これを見事に演出と演じた岩田J。してやったりの仕事ぶりであろう。この馬場を経験した前走も大きい。
そして昨日からの雨で何度も乗って内が有利、まして先行馬が有利な流れ、それを受け身でなく自分から求めていけた騎乗ぶり、あっぱれとしか言いようがない。

それにしても自分の眼がこれほどのものかとガックリとくる桜花賞も、過去になかった気がする。実に情けない一戦でありました…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。